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そして少女は魔王になる  作者: ゴリラ
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第3話 壁内調査

まいったなぁ・・・・・・

トイレの個室で頭を抱える私には目下の悩みが3つ

どこの誰になるかもわからない外部の護衛

何考えてるか分からない塚田さん

・・・・・・そして経過報告だ


最初の2つはもう出たとこ勝負する他ないが

最後のこればっかりは先延ばしにできない


「やるか・・・・・・」


携帯を取り出し電話を掛ける

呼び出し音が数秒も鳴らない内に相手に繋がる


電話に出た男は静かな口調で言う

「名前、IDと所属を」


「窪内、BK201、変異症特部」


「ありがとうございます、どなたにお繋ぎしましょうか?」


「特部の加藤にお願いします」


「少々お待ちください」


そう言うと電話は呼び出し音に変わった


さて、どう誤魔化すかな

この手の嘘は9:1と相場が決まってるしある程度は話さないとな


「よう窪内、そっちの経過はどうよ?」


電話にでるなり馴れ馴れしい挨拶をしてくるこの男は加藤

特部の情報管理を一任されていて腹が立つ言動が多い、が腕は立つので皆から頼られる事も多い

私とは大学からの先輩に当たり研究所に入った後も上下関係は変わっていない


「どうも先輩、天候には恵まれまして調査自体は問題なく行えそうです・・・・・・ただその問題が起きまして」

「先日、壁内で行方不明の部隊が出たようで常に位置が分かるようにGPSを持たされる事になりました」

「後30分毎に定時連絡もするようにと」


まあこんなもんだろう、流石に第三者が着く事になったなんて知られたら面倒だし

万が一大事にでもなって調査取りやめにもなったら給料に響きかねない


「以上です」


「少女の件はどうするんだ?GPS持たされちゃルートから外れられないだろう」


「どうも護衛の塚田さんに良い案があるそうなので任せてます」


「おいおい他人任せか?失敗したら減給な!じゃ頑張れ!」


そう言い放つと彼は通信も切らずに席を立ち裏で話し始める


「高梨ちゃーんご飯行こうよー辛気臭い後輩からの報告聞いてたらお腹


聞くに堪えない電話を切り、トイレから出る


トイレから出てゲート前の待合室に行くと先ほどまでいた塚田さんがいなくなっていた

時計の針は既に13時を回っていた、11時には調査開始する予定だったのだがすっかり遅れてしまった

まあ今から行っても日暮れ前には悠々と終わるだろう

その手の考え事をしていたら後ろから肩をたたかれる 


「すみません待たせました」


「いえ、大丈夫ですけどどこに行ってたんですか?」


「色々と下調べしてましてね、追加の護衛の件ですけど十中八九大丈夫ですよ」


「いい加減その案ってのを教えてくださいよ、なんでそんなにもったいぶるんですか」


「ここならまあいいですかね・・・・・・聞いてる人もいないでしょうし」

「まずある程度自然に調査を行ってください、しばらくしたら俺が適当な嘘をついて護衛とルートを外れます」

「その間に例の調査を済ませてください」


「どのぐらい時間が掛かるかなんて分かりませんよ?どれぐらい時間を稼げるんですか」


「ご希望ならいつまでも、こういうのは俺の天職みたいなもんです」

「結果がどうあれ、そっちの用事が終わったらこれを打ち上げてください、フレアです」


そう言うと彼は鞄からフレアガンを取り出し私の鞄の中に入れる


「ちょっと計画が適当過ぎませんか?少し考えるだけで失敗する方法がたくさん浮かぶが」


「まあまあとりあえず中に入りましょうや、護衛の事は安心して任せてください」

「時間、押しちゃいますよ」


彼はそう言って会話を強引に終え、待合室から出ていく

納得はできていないが他に良い案があるわけでもない、時間もない・・・・・・ので仕方がないが

彼の案に乗る以外になさそうだ

私も待合室から出てゲート前で待つ彼に合流する


「お2人だけですか?」

ゲートのドアを管理する窓口から門番が聞く


「いえもう1人、そちら側の護衛もいるはずなんですが」


「あぁ、彼女ならもう外にいますよ」

「じゃあ開けますね」


そう言うとゲートの重苦しいドアはけたたましい音を鳴らしながらゆっくりと開いていく

ゲートの向こうから眩しい光が差し込み室内の明るさに慣れた私の目は白に包まれる

歩みを進め白の中に入り数秒して目が慣れてきた私の前に広がるのは荒廃した都市だった


「なんど見ても圧巻だな、隔離地域ってのは」


「遅いですよ、どこで油売ってたんですか」


この高飛車で威圧的な話し方はもしかしてまたあいつか・・・・・・

確信に近い予想を持ちながらも私の体は本能的に振り向く事を拒んでいた


「ちょっと、人が話しかけてるんですからこっちを向いたらどうですか?」


そう言って彼女は私の肩に手を掛ける

振り向いた私の目に入ったのはスーツから迷彩柄の服に着替え小銃と鞄を背負った上杉さんだった

思いもよらない格好に呆気に取られた私は口をパクパクとさせながら次の言葉を探していた


「も、もしかして護衛ってあなたなんですか・・・・・・?」


聞くまでもない明白な質問だったが聞かない訳には行かなかった


「そうですけど、なにか文句でもありますか」


「い、いえ・・・・・・」


「そうですか、じゃあ行きましょうか」


そういって彼女は先陣を切り歩き出す


「何してるんですか、時間は待ってくれませんよ」


「・・・・・・」


完全に場の指揮を取られた私にできたのは黙って彼女の後ろをついていく事だけだった

塚田さんはできるだけ目立たない位置で静観していた


ゲートから少し歩き町中に入ると町は静かに佇み私たちの足音を反響させる

私を挟み上杉さんが先導し、塚田さんは後ろを守っている

ふと足を止め周りに目をやると二階部分が崩れた家屋が目に入る

日差しも入り屋根もある、この手の物件は感染者が居着きやすい

今回の目標はあくまで少女だがサンプルの確保はしといて損はないし中を見てみる事にする


「すみません、あそこの中を調査したいのですが」


「わかりました、先に私と塚田さんで中を見てきますので少し待っていてください」


「お願いします」


そういうと2人は小銃を肩から外し手に構え家屋の中に入っていく


「入ってもいいですよ」


中から塚田さんが声をあげる

どうやら’住人’は居ないようだ、私も中に入る


「ただの廃屋じゃないですか、何かあるようには思えませんけど」


「うーん、そんな事はないと思いますよ」

「ここの立地はかなり感染者向けですよ」


そう言って周りを見渡すと鳥の巣に似た物を見つける


「ほらありましたよ」


「これは・・・・・・巣、ですか?大きいですね」


「おそらく鳥類型の感染者が作ったのでしょう」

「あぁこれはいい、卵がありましたよ」


「卵ですか?!」

彼女は驚きの声をあげこちらに駆け寄ってくる


「繁殖するのは知っていましたけど実物を見るのは初めてで・・・・・・」

「モンスターは全部卵から孵るんですか?」


「いえ、そんな事はないですよ」

「基本的には変異後のタイプに依存しますよ、珍しいタイプでは単為生殖、分裂も確認されています」


「分裂ですか・・・・・・おぞましいですね」


「まあそうですね」

私は巣から卵を1つ拝借し容器に入れる


「ここはこんなもんでしょう、ありがとうございましたルートに戻りましょう」


その後も幾つかの廃屋を回りサンプルを回収した私達は

提出していたルート通りなら今回の目玉に当たるビルに到着した

このビルは保存状態が良く、中では感染者達が巣食っている事も確認されている

生態調査ならこれ以上適任の場所はそう多くはないだろう

なにより入り組んでいる・・・・・・塚田さんの案をするならここ以外はないだろう

幸い件の少女が目撃されたのもここから遠くない

確保から移送まで含めて・・・・・・数時間もあれば終わるだろう

最も少女が見つけられれば、だが

ビルの前に立った私は塚田さんに目で合図を送る


「さあ行きましょうか」


塚田さんが先頭を代わり中に入っていく

軽く探索をしながら階を進め私達は3階に差し掛かっていた

踊り場で塚田さんが私の肩を素早く2回叩く、どうやらこれが合図のようだ

3階に到着するや否や、彼が声をあげる


「感染者だ!!!」

「追うぞ!窪内さんはこの部屋の中に、中から鍵をかけてください」

「俺と彼女、2人を確認できた以外には絶対に扉をあけないようにしてください」


「は、はい」


「ちょっと待ってください、別に追わなくても、分断するのは危険じゃないですか?」


「非戦闘員の窪内さんを連れて歩くのは危険だ」

「それに人を見て逃げるモンスターはあまりいない、もしかした行方不明の部隊に関係しているかもしれない」


「わ、わかりました追いましょう」


そう言うと2人は塚田さんの指さした方向に走っていく

荷物を下ろし鞄の底から着替えと装備を取り出し着替える


「ここからは単独任務だな」

すみません遅くなりました

次話からやっとタイトルの少女が出てくる予定です

21日までに更新しますのでよろしくお願いします


7/22 追記

古戦場から逃げられなかったので遅れます、ごめんなさい



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