第2話 予期せぬ事態
まいったな・・・・・・
呆然と立ち尽くす私に何故か仁王立ちの彼女が質問を続ける
「窪内さんでよろしかったですか?お隣の方を紹介して頂けると助かるのですが」
「あっはあ、すみません、こちらは今回の護衛担当の塚田です」
「なんすかこの人、えらい敵対的ですけど」
彼は顔を寄せ小声で聞いてくる
「さぁ・・・・・・」
私は引きつった笑顔を崩さないように答える
「現状説明をしますのでこちらへ」
そう言うと彼女は踵を返し返事も待たずに奥の通路へと歩き出す
いかにもなハイヒールの足跡を響かせながら
どうしようもない私達はそそくさと荷物をまとめ彼女に続く
「こちらです」
彼女は通路に並んだドアの1つを開け私達を通す
中は正面に大きなスクリーンがあり、横には教壇
その前にはいくつかの横長テーブルを椅子が並んでいた
「お好きな席にどうぞ、たくさんありますので」
私達に続いて入ってきた彼女はそう言いながらドアの鍵をしめ、ドアの小窓にブラインドを下ろす
「現状説明だけですよね?なにもそこまでしなくてもいいんじゃないですか?」
「これから話す情報はまだ重要機密扱いですので」
「時間がもったいないですし、始めましょう」
「はぁ・・・・・・」
そう言われて私は最前列へ、塚田さんは3列目のドアの死角になる位置に座る
「先日、定期内部調査に行った私達の仲間からの通信が途絶えました」
「ルートは隔週通っている物で前回は異変なし、今回もなんの問題も起こる事なく終わるはず、でした」
「もう救出部隊は出したんですか?」
「当然です、定時連絡が途絶えてから30分以内にレスキュー隊を送っています」
「ですが、レスキュー隊が確認したのは脱がれたヘルメットが1つ、そして装備していた携帯小銃2丁だけでした」
「え?」
それはおかしい、なぜなら壁内で起こり得る問題の原因はせいぜい2つに限られるからだ
人か感染者、人なら小銃なんて貴重品を置いていく訳がないし
感染者なら血痕か何かが残っているはずだ
「ですので、今回の調査は出来れば取りやめていただきたいんです」
「もちろん許可は下りていますので私達に強制的に中止にする権限はありませんが」
「それで?」
塚田さんが席を立ち声をあげる
「どういう意味ですか?」
「どういう意味ですか、じゃないでしょうよそれからどうしたんですかって聞いてるんです」
「まさか手をこまねいているだけって訳じゃないでしょう」
「そんな訳ないでしょ!今だって懸命な捜索の際中です!」
「部外者の癖になんなんですか!」
「なんだと!?」
「まあまあ2人共落ち着いてくださいよ」
「塚田さんどうしたんですか急に」
そう言うと彼ははっと我に返ったようで席に座る
「あぁ・・・・・・すみません・・・・・・取り乱しました」
「すみません、続けてください」
「なんなんですか急に・・・先ほど申し上げた通り、今回の調査は控えていただきたいんです」
「もちろん手ぶらで帰れとは言いません、我々が保持しているサンプルをいくつかお譲りしますのでそれで・・・・・・」
「我々の事は気にしないでください、中で連絡が取れなくなっても救助も結構です」
「サンプル頂けるのは嬉しいんですけどね・・・・・・今回のは定期調査なんで実際に見ないと困るんですよ」
「そうですよね・・・・・・こちらも二つ返事が頂けるとは思ってませんでした」
「では中間案としてこちらからも護衛とつけると言うのはどうですか?」
やられたな、こりゃ初めからこっちの提案を通す気だったに違いない
これだから交渉事ってのは苦手なんだ
「事前の予定通り私達だけでも大丈夫ですよ・・・・・・?」
「塚田さんは優秀な護衛ですし・・・・・・」
私は冷や汗をかきながら彼に助け舟を求める
「私は護衛が多いに越した事はありませんけどね」
思ってもいない答えに呆気を取られている私を後目に話を進める2人
「じゃあそれでいいですね、ゲートの前で待っていてください」
「はい」
「いや、あのほんとに困るんですけど・・・・・・」
「それでは」
そういって彼女は席を立ち速足に部屋から出ていく
「塚田さん!なんで賛成しちゃうんですか!普段の調査ならともかく今回知らない人増やすのは
「わかってますよ、安心してください私にいい案がありますので」
私の声を遮り塚田さんが立ち上がりながら言った
そして彼も出口へと向かい、ついに部屋には私だけになった
「冗談キツイなぁ・・・・・・せめてその案ぐらい説明してから出てってくれよ・・・・・・」
1人残された部屋で頭を抱えながらそう呟く私の頭はこれからどうするかで一杯だった
ゲート前ね・・・・・・せめてできるだけ仕事に不真面目な人が来てくれる事を祈るか・・・・・・
そして私は部屋の照明を落とし部屋を後にしゲートの方に向かった
筆が遅くて申し訳ないです
せっかくの後書きなのでなにか要望、質問があれば今後ここに書いていこうと思います