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そして少女は魔王になる  作者: ゴリラ
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第1話 第15隔離地域

顔を上げ前方座席の間から正面をみるとそこには10mほどのコンクリート製の壁が並んでいた

この壁こそ隔離地域の象徴だ。

ここは第15隔離地域、隔離されたのは今から14年ほど前、比較的新しい方だ

壁の周りにはフェンスが敷かれ、入るには自衛隊が管理する門を通る以外にはない

と、言うのは出来た頃の話で今ではどの隔離地域にも大抵1つか2つは「裏口」がある

この地域もご多分に漏れず黙認状態の出入り口が確認されているだけで2つある

今回の調査にはこの裏口を使用するかもしれないので事前に調べておいてはある


「先生、どうしました?ぼーっとしちゃって」


「あぁいえすみません少し考え事を」

「あと先生って呼び方はやめてくださいよ、窪内でいいですから」


私の名前は窪内 友、今年で36歳になる

声を掛けた男は塚田、今回の隔離地域調査護衛を担当する事になっている、趣味は麻雀らしく顔合わせの時に仕事が終わったら一局打たないか誘ってきた


「ははは、それは失礼しましたこの前の学者さんは鼻高々でこの呼び方の方が喜ばれましたので」


「うちの者ですか?失礼しました護衛してもらっている身分でその様な態度で」


「うち」とは私の勤務先、国立感染症研究所である。

私の配属は人体変異症特部、大層な名前こそついているが感染が認知されてから28年間

治療薬の1つすら作れていないのでゼニくい虫の無能の集まりとして目下批判の的である


「いやあ違います、民間でしたよ彼は」


「民間ですか?珍しいですね今時」


「最近じゃあもう民間からの護衛依頼は来ませんしね、久しぶり過ぎて書類通るのに随分と待たされたって愚痴をこぼしてましたよ」


彼の言う通り民間の研究機関が活発だったのは感染が広まってから10数年ほどで今ではほとんどが解散、もしくは別の組織になっている


「最初は物見遊山だろうからって許可を下ろさない話だったんですがね、どうもコネと金があったようで上の一声で許可がおりましたよ」


「おっと着きましたよ」


そう言って彼は車のエンジンを切り車から降りた

私も荷物を整え車から降りる

荷物のほとんどはサンプルを持ち帰るための空の容器であったが

塵も積もればなんとやら

鞄を肩に掛けるとズシンときた


「またこんなに容器を用意してくれちゃって・・・帰りの事も考えろっていっつも言ってんのになぁ」


そう愚痴をこぼしながら鞄から3つほど容器を抜き車に置いて行った


「おーい、どうしました」


既に建物の入り口に着いた彼はこちらに手を振っている

大声を出すのはあまり好きではないので手だけ振り返して入口へと向かう


ドアを開け中に入るとカウンターがあり総合受付と書かれた看板がぶら下がっていた


「おはようございます」


受付の女性が顔をこちらに向け笑顔で挨拶してきた


「おはようございます。国立感染症研究所人体変異症特部の窪内です、今日は地域内調査です。」

「これ、書類です」


「お預かりいたします、調査の前に現状説明を担当の者から説明させて頂きますので暫しお待ちください」


そう言われ私達は受付から少し離れた所にある椅子に腰かけた


「ちょうどいいんで今回のルートの確認でもしますか」


そう言いながら彼は机の上に地図を広げる


「入口から正面通りを少し行った後横道に逸れ、この建物内の調査、その後はこの道を通って一周して戻る、これで良かったですよね?」


事前にこちらが提出した地図に引かれた赤い線をなぞりながら確認する


「ちょっと言いにくいんですけど今朝少し気になる情報が入りまして建物内の調査の後にもう1ヶ所だけ調査したいんですが・・・」


小声でそう言いながらペンを取り出し建物から少し離れた所にある場所に青いペンで丸を付ける


「窪内さん調査は事前に提出したルート通りいかないと不味いですって・・・・・・」

「急な変更は十中八九通りませんよ」


頭をペンで掻きながら渋い顔をする塚田さん


「ちょっとグレーな情報なんですよ、なんでも壁内に感染者と一緒に生活している少女がいるって」



「モンスターとですか?!そんなことありえ


咄嗟に彼の口を手で押さえる


「声が大きいですって!」


「す、すみません でもあり得るんですかそんな事?とてもじゃないが考えられない」


「真相は分かりませんが情報は確かです」

「来る前にデータベースを見てきたんですけど過去に1件だけ人と暮らした特異体が確認されてるんですよ」


特異体とは一般的な感染者と大きく異なる生態を持つ個体であり、感染前の思想が原因になることまでは分かっているがそれ以上はまだ分かっていない


「特異体ですか・・・・・・俺も前に一回だけ遭遇した事がありますよ」

「会話が可能な個体でしてね見逃す代わりに情報を渡すなんて取引を持ち掛けてきましたよ」


「応じたんですか?」


「あの時は掃討が指令だったので・・・・・・」


「そうですか・・・・・・」


咳払いをし話題を戻す


「ともあれ少女と感染者です、もし情報通りなら確保したいんですよ、極秘裏に」

「もちろんこれは私の独断じゃないです、上からの命令です」


「確保ってったっていつものサンプルはとは訳が違う」

「生きた人間はともかくモンスターなんてここは通れませんよ?」


「裏口の人間に話を通してあります、確保した後に狼煙をあげれば迎えがくる手筈になってます」


「こういう話は先に通してくださいよ・・・今回だけですからねこう言うのは」


「感謝します」


話を終え荷物を確認していると後ろから声がした


「すみません、お待たせしました担当の上本です」


振り向くと女性が立っていた、髪の毛、眼鏡、服装から靴まで真っ黒の彼女はどこか厳しい口調で話しかけてくる


「感研(感染症研究所)の窪内さんですね?お隣の方はどなたですか?」


まいったな・・・・・・この手の性格のキツそうなキャリアウーマンは苦手なんだが・・・・・・

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