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社員旅行は異世界へ  作者: 矢白
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第1章第3話 お客様、車内ではお静かに

21世紀も5分の1が過ぎたのに、未だに地上を走る乗り物の中では最速で、空を飛ぶより乗りやすい。

なんと言ってもその魅力は自由さにある。

とは言えその自由も本来はモラルという物の上にあるのだが・・・


新幹線が大宮を過ぎる頃

「うんしょ!うんしょ!」

小柄なあーりんが大きめのトランクを荷棚にあげるのに苦労している。

新社会人とのことなので22歳くらいだとは思うのだが、見た目は中学生に見えるし、実際間違えられる。免許を取った理由も就職より年齢確認のためという筋金入りだ・・・

ただし、胸部装甲だけは顔立ちとは裏腹に見事な発達を遂げている。


「おい!沼津~!飲み物足んねーぞ!」


暴力装置が発する言葉という名の罵声が車内に響き渡る。


「へいへーい!お姉さん来たら買っておきやーす。」


沼津 隆 ヌマヅ タカシ アラフォー 既婚。二児のパパ。


何かと言うと社長に目をつけられ、割りを食う担当。

最もほかのメンバー的にはちょうどいいスケープゴートになるので、意外と人望は厚い男である。


「雪さーん、飛ばし過ぎですよぉー」


古藤 優 コトウ ユウ 金髪に近い明るさの髪をショートボブにした姿は、ぱっと見20代でも通用する。実際週1ペースでナンパされるらしいが、実際は社長の幼馴染でアラフォーの既婚者である。

どこからどう見ても天然としか言いようがなく、計算してやっているなら脳内はスパコン並みと思われる。


繰り返すが、大宮を過ぎたばかりの会話だ・・・

アルコールの消費量がとても早いのは我が社の通常の光景ではあるが・・・


相変わらず北の大地へは陸路で行くと4時間を超える。

当然飛行機で行けばもっと短縮は出来るのだが、今回の目的は1週間かけて北海道をバスで巡るツアーなので、敢えて北の玄関口とも言える、函館を目指す一行であった。

社長と会長の飛行機では機内で酒盛りがしにくいという会話が、陸路を選ぶ決め手になった事を当人達は知る由もない。


移動時間も結局パソコンを開く、社畜の鑑。

不足している睡眠時間を補う者。

ひたすら飲む者。

周りの乗客の白い目にオロオロする者。

想い想いに平和な移動時間は過ぎていく。


「んー!!やっと着いた!」


皆それぞれストレッチをしたり凝り固まった身体を解すように伸びをしたりしている。


北の大地の陸の入口、新函館北斗駅。

東京を出ること4時間あまり、やっとこの旅の本当のスタート地点に立った形だ。


ここから一行はマイクロバスに乗り換えて旅路へ。


「神田さ~ん!お待たせしましたぁ!」


あーりんが一台のマイクロバスの前に立つ老紳士にそう声をかける。

白髪に白髭。少し彫りの深い顔立ちは眼鏡をかけたらまるで、某鳥肉屋の創業者に見える。


「お嬢ちゃん、よく来たね。お客様方も遠くからようこそおいでなすった。ささ、どうぞこちらへ。結構飲んで来なさったな~ まずはこちらで胃の腑でも休めなされ。」


そう言って老紳士に渡されたのは、昆布エキス飲料。

味が全く想像つかないが、皆は普通に飲んでいる・・・


「う、ちょい酸っぱいかな・・・」


酸味の苦手な俺には少し辛かったが、車内であれだけ飲んだのに皆一気飲みしていたのは、イベント屋さんの悲しい習性だろう・・・


バスは最初の目的地である函館へ。

札幌以外は仕事でも来たことのない俺には新鮮な景色と平和な観光を楽しんだ。


「はぁい、じゃあ今日はこちらで一泊してぇ、明日からがっつり回りますよぉ〜」


夕食という名の宴会も終わり、チェックインをして各自部屋に引っ込む。


アラフォーに長距離移動はなかなかハードだ。

アルコールの力もあり、早々に意識を手放した。

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