第1章第1話 誰も死なないプロローグ
初執筆、初投稿です。駄文ですが小ネタも盛り込んで気楽に楽しんでもらえたらと思います。
プルルルル・・・
「はい、株式会社ピクシスです。あー、代表ですか・・・
本日は・・・ 少々お待ちください。ねぇ!今日社長来る?」
「しらね!ってかそれどころじゃないから!」
「はぁ・・・ えー本日終日外出しておりまして・・・ はい、折り返しご連絡させます。」
いつもと変わらない日常。 ただ今日は少しだけ皆浮かれている様子だ。
総勢8名の中小どころか零細企業の我が社にも、去年のオリンピックで好景気というものがやって来た。
我が社はイベント制作会社。
大手企業が挙ってオリンピックやスポーツ関連の派手なイベントに手を出す中、大手が見向きもしない低予算、短納期、高原価の案件に手を出しまくったおかげで、今年度3人目の退職者を送り出した。
社員の睡眠時間と精神力を削ったおかげで、思いの外利益が残った為、ブラック企業らしからぬ社員旅行に旅立つ前日だった。
もっとも給料という名の評価で還元しないところがさすがブラックと呼ばれる所以であると、経営層は微塵も思っていないのでタチが悪い。
少し時間は進んで、日付が変わる少し前。
聞き飽きた木琴風の電子音が鳴る。
「この時間に何だよ・・・ あれ?あーりん?」
「遅くにしゅみません!東京デザインツアーの鈴木ですぅ!実は担当の飯田が・・・」
今回の社員旅行は普段から付き合いのある旅行代理店にアレンジを依頼していたのだが、営業担当が高熱でダウンしたそうな・・・
いつも無茶振りしていたので、添乗という名目で一緒に旅行に行くことになっていたのだが、代わりに部下で新人の女の子が来るとのこと。
本来ならば、おっさんよりも女の子と一緒の方が楽しみなのだが、この新人がなかなかの曲者というかツワモノというか・・・
出張の手配を頼んでも、新幹線の時間は間違えるは、ホテルの宿泊日数は間違えるはと、数々のミラクルなミスを犯してくれるのだ。
何事も無く済めば良いのだがと、一抹の不安を抱えながらも旅立ち前の作業を完遂させる。
「記録映像と写真のDVD焼き終わったっす〜」
「所感、まとめ、終わり。」
「よーし、じゃ数量も分析も終わったから入稿して終了な!」
「じゃ!自分、終電やばいんで!」
「オレ、もう、アウト。」
「わーった!木上はもう帰れ! アウトって牧村どうすんだ?明日から社員旅行だぞ!」
「朝、嫁、来る。」
「はいはい。会社に泊まるのね・・・」
「じゃ!鷹さんお疲れっす〜」
「その言い方やめろって!男優か! じゃ俺も印刷屋にディスクコピーと出力入稿して帰るわ〜」
ややチャラ目でダメ男臭がプンプンする男は、木上 光。
アラフォーで独身。通称、月間新彼女。月替りのように連れている女の子が変わる。
人として最低ラインだが、男としてはちょっと羨ましい。ほんのちょっと。
なぜか疲れるとカタコトになるのは、牧村 幸一。
アラサーと言い張るが実年齢は40代も半ばだ。男性陣では少数派の既婚者。
10代半ばの多感なお年頃の娘を持つパパだ。特技は右と左を間違えること。
徒歩5分の距離にも30分前に出発しないと到着できない男だ。
いつもと変わらない光景に見える夜。
こうして株式会社ピクシスの平穏な日常は終わりを告げた。
展開スピードは遅めです。
登場人物多過ぎたので説明回が続きます・・・