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激闘の後は甘い物が食べたくなります

 俺の祈りが届いたのか、巨人は少しだけ躊躇したものの、そちらにゆっくりと動き出して音の聞こえる方向へ歩き出す。


 巨人がやっとこちらに背中を向けた……


 10mもないこの距離なら俺でもこの小瓶を奴ぶつける事が出来る!


 俺は全力で振りかぶり巨人に向けて小瓶を投げる。


 割れるかどうかだけが不安だったが、【鑑定】で対象に接触すると効果が発生するとあったので、それを信じるしかなかった……


 小瓶は巨人の背中に当たると同時に、光の粒子を放ちながら中身を撒き散らした。


「グゥオオオオッ ⁈ 」


 巨人が予想外の痛みに悲鳴を上げながらのたうち回る。


 俺は倒れた巨人の足を狙って握りしめた剣を振り下ろす!




「ザクッ! 」




 鈍い音を立てて剣が太ももに当たるが僅かな傷しかつけられない。


 すぐに剣を引き戻し、もう一度足を狙い今度は両手で握りしめて剣を振り下ろす。


「うおおおおおおぉ! 」


 俺はここで叫ぶことで合図とし、少しでもダメージが上がればと考えていたが、やはり同じ程度のダメージしか与えられない。


 その際に、巨人が闇雲に振り回した手が偶然にも俺に当たってしまう!


「ぐはあぁ ⁈ 」


 今まで生きていた中で1番の苦痛が体全身を襲う。


 カナハに地下室から出る前に防御魔法と継続回復魔法をかけてもらっていたが、それが無ければ俺は確実に死んでいただろう。




「とーちゃーん! 」




 背後からフタバの大きな悲鳴が聞こえてくる。


 先程の叫び声か、その前のアラームで出てきたのか、どちらか分からないがタイミング的にはバッチリだ。


 俺はそのまま振り向かずに作戦を叫ぶ。


「タロウ! 石だとこいつにはダメージがいかないようだ。渡した小瓶が確実に当てれるようなら当ててくれ。カナハ、済まないが回復を頼む。他の3人は待てだ。こら、オイチ、ステイ! 」


 すかさずオイチがこちらに来ようとしたので、必死に止める。


 やっぱりあの子は危うすぎるな……


 痛む体を無理矢理立たせて、今の巨人の様子を見てみる。


 ……背中の傷が少しずつだが治っている ⁈ 嘘だろ、あれ王水だぞ ⁈




「き、貴様。名乗りも上げず不意打ちとは恥知らずめ! 我は悪魔男爵ネガル様が腹心のバーモン。此度は…ウギァァァァ ア ⁈ 」


 俺に向かって口上を述べていた巨人の顔面にタロウの鋭く投げられた小瓶が無情にも直撃する。


 王水が皮膚を溶かし、骨すらも溶解させていく。


 俺の知る限りの想像出来た最強の薬品だ。


 1つ100Pもしたが、これなら安い買い物だ……


 それにしてもタロウのやつ、よくぞ巨人にに命中させてくれた。


 我が子ながら本当に頼りになる長男だ。


 倒れてビクビクしている巨人の元に俺は慎重に近づき、動かないのを確認してから喉元に片手剣を突き刺す。


 今度はすんなりと突き刺さり、巨人はピクリとも動かなくなる。


「ふぅ……やったか? 」


 ため息をつきながらようやく緊張を解く事が出来た。


 振り返ると子供達とカナハがこちらに向かってくる……カナハの背後の景色が何かおかしい? そう感じた瞬間、俺は無意識に走り出し、カナハを抱き締めて転がる!


「な、何よ?そんなにうれしかったの?まだ昼間なんだから駄目よ。せめて子供達が寝てからに………マサル? …え、背中から血が出てる ⁈ 」


 背中から血を流す俺を見て動揺するカナハ。


 駄目だ、周りを見ろ!そう言いたいのだが動く事どころか声すら出ない。


 切られた武器に毒でも塗っていたのか?


 次の瞬間、無防備なタロウが突如真横に吹き飛ぶ!


 それを見た瞬間、動かない体が勝手に立ち上がりタロウに攻撃した相手に剣を振るう!


「まだ動けるのか? バジリスクの毒だぞ? こいつ本当に人間か ⁈ 」


 姿が見えるようになった相手はまさに蜥蜴人間だった。


 いや、カメレオンだから少し違うか。


 上半身がカメレオンの男は短剣をこちらに向けながら嘲笑あざけわらっている。


 確かに俺は体がボロボロだし、背中からは大量出血の上毒にも侵されている……だが、息子に手を掛けたお前にはここで必ず逝ってもらうぞ!


 片手剣を腰に構え、体当たりするつもりで突撃する。


 蜥蜴人間は驚きはしているものの、俺を殺す為に既に短剣を構えている。


 声なき声を上げ続け、意識を繋ぐ俺の背中にカナハの呼ぶ声がかすかに聞こえる。




『召喚者カナハより【願璽】のスキルが一時的に貸し与えられました。ユニークスキル【願璽】はユニークスキル【父性勇者】に変換され発動します』




 体の痛みが一瞬にしてに消え、俺の身体能力が劇的に跳ね上がる。


 スピードが一気に上がった俺の攻撃は相手の体の中心を貫き、相手の短剣は空をきる。




「ふ、ふざけるなこの野郎?!」


 怒り狂う蜥蜴人間の短剣が、無防備な俺の頭を狙う。


 先程の力はすでに消え去り、俺はただ目に映る短剣を眺めていただけだった。




「ビャ–––––––!!!」




 ものすごい泣き声がこの場全て響き渡る。


 その叫びと共に白い閃光のような波動が辺り一面へと広がっていく!


 気がつくと、コタロウがこちらを向いて泣いている……


 コタロウの泣き声そのものが力の波動となって、驚いている蜥蜴人間を弾き飛ばす!




「フタバ!コタロウをおねがい」


 オイチはその場でコタロウをフタバに渡すと、俺の体に近寄り短剣を抜き取る。


 オイチにやめろと言いたいが、声が全く出ない。


 蜥蜴人間はその場を離れ逃げようとするが、動けないのかその場に片膝をついたまま……オイチに向けて舌を伸ばした ⁈ その先には紫色に濡れた針のようなものがある !


 不味い、このままではオイチが……







「しゅーかーく! 」


 ジロウの声が響き渡ると同時に舌、の先の針が霞のように消えていく。


 収穫? 収穫で取れちゃうのそれ ⁈


驚く俺を余所に、蜥蜴人間の元まで走り抜けたオイチは足元の蜥蜴人間を見下ろしながら右手に持った短剣を構え、ポツリと呟く。


「あなたはわがかぞくのてきです。わたしはあなたをゆるしはしない。ちなみに、とかげはしょくりょうですよね? しょくにくならばかいたいできるはず……【解体】」


 冷たい目をしたオイチが短剣を無造作に振るうと、蜥蜴人間は驚いた表情のままバラバラに解体され肉と内臓、それに骨に仕分けられる。オイチちゃん⁈ それ半分人間よ?


 ボロボロの体がパニックの所為で踊り出してしまいそうだ……




「みんな無茶し過ぎ!マサル大丈夫?(ヒーリング)(キュアポイズン)」


 カナハが涙を流しながら魔法を掛けてくれる。


 魔法により俺の体の痛みが少しずつ和らぎ楽になっていくのを感じる。




どうやら今度こそ、俺達の闘いは終わりを迎える事が出来たようだ……

 



次回の投稿も2日後となります。

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