戦うからには準備が必要です
前回より読んで頂きありがとうございます
「ぼくのなまえはタロウといいます。スキルは【飛射】をもっています」
1番目は長男のタロウからだ。
140cmほどの背丈でビーグルのような大きな耳が垂れ下がり、細い尻尾を持っている聡明な子だ。
弟妹達への気遣いも良くできている、正に長男といった感じだ。
茶色の髪に黒い瞳で美少年。
隣の悪魔がはぁはぁ言ってるが、気にしてはいけない。
【飛射】というスキルは、飛び道具ならどんなものでも扱えるレアスキルだそうだ。
ただし、能力半減の為今はそこまで重たいものを持たないから注意が必要だ。
「わたしのなまえはオイチともうします。スキルは【家事全般】です」
2番目は長女のオイチだ。
タロウと同じか、少し小さいぐらいの背丈。
ピンと張った尖った耳と、小さな小ぶりの尻尾を見るからにドーベルマンのように感じる。
隣の悪魔もほーっと感心するほどの佇まいだ。
黒のストレートの髪が良く似合っており、黒い瞳と合わさるとまるで日本人形みたいだ。
【家事全般】スキルはその名の通り、家事全般が出来るレアスキルだ。
本人は戦闘スキルが良かったらしいが、家事全般が平均以下の自分としては嬉しいスキルだ。
「ぼくはジロウ。スキルは【収穫】だって」
3番目は次男のジロウ。
タロウにスキルを教えてもらいながら話している130cmほどの元気な男の子。
ハスキーより少し短いモフモフの耳と、クルリと大きいモフモフの尻尾。
これはマラミュートかな?
髪の毛は薄い黒なのだが、耳元付近だけ白くなっている。
青い瞳が撫でて撫でてと言っているみたいでついつい頭を撫でてしまう……
あ、他の子達がしょげている。
みんな集めてなでなでだ。
悪魔が一緒に撫でられていたが気にしないでおこう。
【収穫】は採取した物が高品質になり、量も増えるというレアスキルだ。
これからの生活ではとても重要になりそうなスキルだ。
「フタバだよ。スキルは【詳細地図】なんだって」
4番目は次女のフタバ。
ジロウより5cmぐらい小さいのかな?
葉っぱのような耳に、細いながらもモフモフな尻尾、何より大きくうるっとした黒い瞳。
これチワワだ!
髪は金髪で少しウェーブのかかっており肩の辺りで切り揃えられている感じ。
すでに悪魔が抱きついているのは仕方がない。
可愛いからな!
【詳細地図】は10km四方の地図をステータスボードのように出したり、視覚に表示できるらしい。
拡大機能もあるため非常に便利そうだ。
これまたレアスキルらしく、全くレアスキルのバーゲンセールだな。
「うー、あぅ。あー」
5番目は三男のコタロウ。
俺の胸元で元気にはしゃいでる男の赤ん坊です。
大きく三角な耳にふさふさの尻尾。
シェパードかと思ったが髪と尻尾が白い。
ホワイト・シェパードかな? 珍しい。
しかも目の色が両方で違う、金銀妖瞳だ!
青と黒の2色の瞳は神秘的だなぁ。
生後1年未満としか言いようがない。
頭や耳を撫でるときゃっきゃと喜ぶのでやめられない。
悪魔はこっちに来ないで下さい。
スキルは確認した所【皇帝覇気】というユニークスキル。
俺の【鑑定】では名前しか分からず、カナハの【鑑定】は弾かれるらしい。
取り敢えずこの子は素質が凄いということだけ分かった。
可愛いからどうでもいいけど。
「困ったわね……戦闘系は1人。コタロウは未知数だし、赤ちゃんだから除外するとして前衛がいないわ」
悩ましそうなカナハは放って置いて、俺はコタロウを抱いたまま魔素製品作成を意識する。
『思い浮かべたものを魔素で作成します。現在1000Pの魔素製品ポイントがあります』
色々試した結果、片手剣、盾、レザー装備一式を思い浮かべる。
『それらを作成すると500P消費します』
問題ないのではいを選択する。
『アイテムボックスにお届けしました』
先程創ったアイテムをイメージして、装備品を床に出す。
周りの子供達はびっくりするし、カナハは大きな口を開けて言葉が出ないようだ。
装備品の状態を確認した後、タロウにコタロウを預けると黒い革で出来たレザー装備を1つずつ装備していく。
「ち、ちょっとあんた、いきなり魔素製品作成なんてどうしてすんなり使えるのよ? しかも、完全に使いこなしているし……」
動揺しているのカナハを無視してレザー装備一式をつけ終える。
装備をしたら体を動かして、ズレや重さの確認をする。
最後に鞘を腰につけ片手剣と盾を持ち、片手剣を振ったり、盾を持って視界の確認をして自分の現在の状態を確かめる。
「カトー、ちゃんと質問に答えなさいよー!」
カナハが我慢できずに遂に切れたようだ。
余り余裕はないのだが仕方がない……一応説明してやるか。
「眷属召喚で大体のコツは掴んだからな。魔素製品作成については問題なく使えたよ。製品の武具については色々な映画などを参照して創ってみたんだ。銃やロケット、飛行機などは想像しようとしても出来なかったから、制限がある事みたいだな。武器防具については使ったことがないから今装備して特性を調べている所だ」
言い終わるともう一度魔素製品作成を使い、ボーラーとスリング、あと短剣と薬品の入った小瓶を2個ずつ作成する。
これで魔素製品作成ポイントは残り100Pになってしまった。
「タロウ、これがお前の武器だ。俺が敵の攻撃を引きつけるからお前が当たると思った時に使え」
ボーラー、スリングそれと短剣に薬品入り小瓶を1個を渡してやる。
瓶の中にはある特殊な薬品が入っている。
タロウに余り負担を掛けたくないのだが、俺1人で対応出来るか分からないので仕方がない。
「わかったよ、おとうさん。おとうさんをきずつけるやつはぼくがやっつけるんだ!」
腰にボーラーと短剣を挟み、スリングと小瓶を持って俺に決意を語るタロウ。
コタロウはオイチに預かってもらう事にする。
自分も腰に短剣と小瓶を挟み、邪魔にならないか調べる。
「何そんなにやる気になってるのよ? 来たばかりの頃はあんなに目茶苦茶嫌がってたのに…」
不思議そうに尋ねるカナハだがそんな分かりきった簡単な答えは1つしかない。
「子供達がいるからだ。この子達がいるから俺はここに残ることに悔いはないし、生きがいを感じる。この子達の為なら戦闘なんか大したことじゃないな」
きっぱりとそう答える。
地球での生活に未練がないわけじゃない。
それでもこの子達がこうして生まれ、お父さんと呼んでくれるならこちらの世界で骨を埋める覚悟だ。
「本当にあんたお父さん気質なのね……確かにこの子達は可愛いものね。私もお母さんとして頑張らなくちゃ……」
んん? 今何か変な単語が聞こえたぞ? 気のせいかな?
次話よりは隔日投稿とさせてもらいますのでよろしくお願いします。