子供はやっぱり可愛いものです
前回より読んで頂きありがとうございます
【眷属召喚】とやらを使ったら、眷属どころか可愛らしい子供達が召喚された件について。
その内1人は生後一年も経たない赤子に見える。
「おぃ……これはどうなってるんだ? コボルト召喚したはずなのに何でこんな子供達が出て来たんだ? 」
カナハの側まで走っていき、動揺を抑えながら小声で話す。
子供達は不安なのか、硬い表情でこちらを見ている。
俺としては誘拐なんてするつもりはなかったんだが……どうしてこうなった?
「何よ? ちゃんと召喚出来てるじゃない。むふ、可愛い子達ねー。あら、赤ちゃんまでいるじゃない。魔素が足りない分、幼児化したのかしら?……ごめんなさい、ごめんなさい! 今から説明するから許して! 」
子供達を見るなり、目をキラキラと輝かせて走り出そうとするカナハ。
今にも飛びついて行きそうな気配だったので、その顔面を片手で鷲掴みにして空中に持ち上げている。
子供達はその様子を見てプルプル震えている……確かにちょっと可愛い。
「多分領域の設定が私の選んだ設定のままだったのね。領域の移譲なんて初めてだから気がつかなかったわ」
涙目のカナハをジト目で見ながら、俺はぐずる赤ちゃんをよしよしと背中を撫でながらあやしている。
流石に見た目小学生の子供達に赤ちゃんの面倒を見ろとはとても言えないしな。
他の子供達も何故か俺に懐いており俺の体にしがみついたり、周りをぐるぐる歩きながらぺたぺたと触ったりしている。
ちなみに、ハンカチを噛んでいるカナハの側には誰も近寄らないみたいだ。
クックックッ……いい気味だ。
「最初に表示された外見と違うのはその為か。それで設定を変えたと言っていたが、どう変えたんだ? それによって戦い方が大幅に変わって来るんだが……」
俺に抱きつく子供達を見ながら、段々と不安になってくる。
こいつの今までの行動を考えると、行き当たりばったりな所が多々見受けられる。
運が良ければそれでうまくいかも知れないが、生憎俺の運はスライム並みだ。
「私の領域設定は『メルヘン』ね。眷属は可愛さ重視にしたから運以外のステータスが半減、代わりに運の値は3倍になっているわ。スキルは自動的に所得するようにしてるの。それによりレアスキルが出やすくなっているわ。領域設定は直径20kmぐらいになっていたと思う。動植物や自然に関しては面倒だから初期値のままね。これでいいかしら? 」
それを聞いた俺は、身体中の血が頭に昇るのを感じてしまう。
「良い訳あるか! てめぇ人生舐めてんのか? 眷属のステータス半減って、それだけでも充分やばいのが分かるわ! それにも増してスキルが自動所得だと? この子達の人生はガチャじゃねえんだぞ! 人生設計を真面に考えろや! 」
カナハに対して怒りをぶつけると、取り敢えず抱いていた赤ちゃんを1番大きいな男の子に手渡して、カナハの元へと向かっていく。
先程まではそろそろ封印しようかと思っていたこめかみへの梅干し攻撃を遠慮なくカナハに対してお見舞いしてやる!
カナハの悲鳴が聞こえるが、そんなもんでは許されない。
敵対生物が来ていることも忘れてお仕置きをしていると、悲鳴のような悲しい叫び声が聞こえてくる。
「おとうさん、もうやめて! ぼくたちなにもできないかもしれないけど、がんばるから! おねがいだからみすてないで! 」
1番背の高い少年が涙を流しながら俺に対して叫んでいる。
それを聞いた瞬間、お仕置きしていた手を止めて呆然とそちらを見てしまう。
召喚されてすぐだから不安だったのは間違いないだろう……
なのにそれでも何も言わず、頑張って耐えていたのだろう……
そこに考えの無い、俺の自分の眷属に対する誹謗中傷だ……
俺が望んで召喚して呼んだはずなのに、俺はこの子達に対して役に立たないと言っていたようなものなのだ……
俺は阿保だ!
俺の方が考えなしだ!
余りの自分の情けなさに、自分自身を許すことが出来ずに床に手をつくように座り込み、その場で頭を床に叩きつける!
こんないたいけな子供達を悲しませたなんて、自分がどうしても許せない!
何度も何度も頭を打ちつけて自分自身を傷つけていると、脇腹あたりに何かがぶつかって来たのが感触で分かる。
何かと思い血に濡れた視界を向けると、脇腹にしがみつく子供がうっすらと見える。
1番大きいの少年よりは小さいが、元気そうな男の子だ。
その子の顔は涙と鼻水で濡れており、とても辛そうな表情をしてこちらを見つめている……
「おとーさん。ちがでてるよ? そんなにあたまをぶつけたらいたいよ? もうやめよ? 」
俺を必死に止めようとするこの子の姿を見てしまうと、先程の激情もすっかり消えてしまう。
俺はその子を抱き締めて「大丈夫だよ。心配かけてごめんな」と言うと、緊張の糸が切れたのかその子は泣き出してしまった。
優しいこの子の背中をさすり慰めていると他の子達も泣きながらこちらに向かってくる。
「おとうさま。わたしたちはおとうさまのためならなんでもしますから、おそばにおいてください」
「とーちゃん。ふたばもなんでもするよ! 」
「おとうさん。むちゃをしないでください。ひたいがたいへんなことになっています」
「あー!だー! 」
悲しそうな目で俺を見つめる女の子。
心配そうな顔でこちらを見ている女の子。
赤ちゃんを抱えて俺の額を痛ましげに見る男の子。
まだ何も分かって無いのか元気そうな男の赤ちゃん。
この子達は俺の子供だ。
俺が【眷属召喚】で創り出したとはいえ、俺が求めて生まれた俺の子供達だ。
全員を抱きかかえて俺は心に誓う。
この子達がもう悲しまないよう、この子達がずっと笑って暮らせるような生き方をしよう……と。
「ちょっと額の怪我、結構深そうじゃない! 手当てするからこちらに頭を向けなさい……回復魔法の(ヒーリング)。これで傷は大丈夫。急に怒り出したり、頭を打ち付け出したり…今なんて泣いてるし本当に大丈夫? 」
カナハが俺を心配しているのか、こちらをずっと見ている。
根が悪い子ではないのは分かっているんだが……いや、それどころじゃなかった!
「もう大丈夫だ……心配かけてすまなかったな。それでこんな状況だが、敵対生物相手にどうすればいい? 俺はこの子達を出来れば戦闘になんか出したくないんだが……」
俺の言葉を聞いたカナハも思案げになり何か考えているようだ。
確かに人数は増えたが、戦力としてはあまり考えたくはない……何故なら俺の子供達だからだ。
戦闘経験の無いおっさん1人でどこまで戦えるか不安だが、今の俺ならこの子達の為なら何でも出来そうだ。
「取り敢えずこの子達のスキルを見て見ましょう。後は自己紹介もね」
そういえばこの子達の名前も知らないな。
名前はつけたがどの子についたのかまでは調べてないからな。
「それもそうだな。じゃあお前達、お父さんに自己紹介してくれるかな? 大きい子からよろしく頼むぞ? 」
そんな俺の言葉に子供達は元気な声で「はい! 」と言うと、順番に自己紹介を始めてくれた。
やっぱりうちの子達は可愛いな。
今日の12時に6話を投稿させてもらいますのでよろしくお願いします。