異世界は危険に満ち溢れているようです
前回より読んで頂きありがとうございます。
どうやら俺はカナハの職業を奪ってしまったみたいだ。
これではまるで俺が加害者だな。
「あれ? でもお前『私の部下として呼び出した』とか言ってなかったか? あと、眷属は魔素から創り出すんじゃなかったのか? 」
何だか妙に話に食い違いが出てきたのでカナハに確認してみる。
すると、カナハは嘘がバレた子供のように(500歳過ぎの悪魔だがな)言い訳を始める。
「あ、あの時は私の職業がゾーンマスターから召喚師に変わったから、あんたがそれに気付く前に元からゾーンマスターだった事にすればこちらの言う事を聞いてくれるかなーって……ぎゃー許してー! そ、それから眷属召喚は魔素から創り出すのは本当よ。でも私が眷属召喚をした時どうやら『何か』が起こって、本来の召喚儀式のように違う世界から召喚するようになった……みたい。あんたの世界に繋がったのは、多分あんたの世界で私達の世界に関わるような『何か』が起きたとしか言いようがないわ」
途中に折檻を交えながら理由を説明をさせてみたのだが、どうやら今回は嘘をついてはいないようだ。
「ふむ…ゾーンマスターの職業については納得した。次にステータスに関してなんだがおかしい所はあるか? 」
「ステータスね。見てみるわ……人間のレベル1だと平均値が30前後だからある意味一般人と言いたい所だけど、知力と器用は高めね…あんたなんで精神が999もあるのよ ⁈ ほとんど人間最強の精神なんじゃない ⁈ 幸運は酷いわね…スライム並みって感じ? …魔力が0ってあんたどうして生きてるのよ ⁈ 」
どうやら俺はステータスも規格外らしい…悪い意味で。
カナハが慌てて俺の体をぺたぺた触りまくっているが、別に俺はロリコンではない。
落ち着かせる為に俺の体から剥がす。
「どっか痛い所とかない? 体に力が入らないとか、脱力感があるとか眩暈とかしない? 」
余りにも必死なカナハの行動に多少動揺はしたものの、目を瞑り神経を集中させ体の状態を確認してみる……大丈夫今の所は問題無いようだ。
「大丈夫だ。特に違和感を感じる場所は無い」
そう言うと安心したのか、その場に座りこむ。
ちょっとだけ感動してしまったので頭を軽く撫でて「ありがとな」とお礼を言っておく。
「ち、違うんだから! ゾーンマスターの職業を持ったまま、あんたに死なれたら私が困るから心配しただけなんだから! 」
頰を真っ赤にして俺に怒り出すカナハ……おぉ…これが噂のツンデレというやつかと感心していると、頭の中で何かアラームのような音が聞こえてくる!
『警告します。此処から東に3kmの場所に敵対生物を感知しました。早急な対応を願います』
「はぁ? 敵対生物を感知しただと? なんだそりゃ! 」
思わず聞こえた報告をそのまま喋ってしまう。
その言葉を聞いたカナハは真っ青な顔になり、こちらに詰め寄ってくる。
「方角と距離はなんて言ってたの? あと数は? 」
あまりのカナハの剣幕に驚きながらも、先程の報告をもう一度思い出そうとする。
「東に3km。数は…報告に無いな」
そう答えると、カナハは難しい顔をして考えこむ。
沈黙の時間が刻々と過ぎていく中、俺がカナハに理由を聞く為に声を掛けようとした時、カナハは意を決した表情でこちらに話し掛けてくる。
「とりあえず眷属召喚をしてみて。戦力が足りないから少しでも作らないと! あとは魔素品作成で使えそうな武器を作ってみて!」
カナハの真剣な表情に事の重大さを感じ取り、言われた通りやってみようとする。
【眷属召喚】を思い浮かべると、頭の中で誰かの声が聞こえる。
『眷属召喚。現在のレベルではゴブリンかコボルトを選択出来ます。』
とりあえずその2種類の外見が知りたいと思うとゴブリンの外見が現れる。
1m前後の大きさで緑色の体。
獣のような乱杭歯を持ち、血走った目を見開いている。
そこまで見た瞬間、こいつはは駄目だと思いコボルトの外見に変更する。
コボルトの外見は身長は同じくらいだが、体が全身毛で覆われており頭が完全に犬である。手足の爪が長く、口からは狂犬病のように涎を垂らしている…
この2体のどちらかしか選べないのかと考えると、肯定の意志を感じる。
あんまり選びたくない選択だが、時間が無いのでモフモフ出来そうなコボルトを選ぶ。
『現在の領域内での魔素では最大5体の召喚が可能となっています。何体召喚しますか? 』
数を聞かれたので、1番多い最大の5体を選んでみる。
『男性型3体、女性型2体の名前を決めて下さい』
面倒なので、タロウ、ジロウ、コタロウを男名で、オイチ、フタバを女名で選択する。
……我ながら酷いネームセンスだ。
『登録終了しました。各個体にスキルを1つ付与し顕現します』
おい ⁈ スキルは選べないのか? そう考えてみるが、すでに反応が無くなっている。
全く不親切な能力だな。
そう考えながら眷属が顕現するのを待つ。
魔素と呼ばれるものが集まるってくるのを今の俺は感じ取れる。
集まりだした魔素は俺の体に纏わりつき、しばらくすると離れていく。
あまりに予想外の事だった為ただ見ていることしか出来なかった俺だが、その魔素が人の形を取り出して光り輝き始めた時には流石に危険を感じて思わず身構えてしまう。
輝きが収まった後俺の目に最初に映ったものは、小学生ぐらいの子供達が4人とその内の1人に抱きかかえられた赤ん坊……そして何よりも驚くべき事に、その子達の頭の上には犬のような耳が存在しており、お尻の方に可愛い尻尾が付いているという、正にコスプレ集団とも言える眷属達であった!
明日の0時に5話を投稿させてもらいますのでよろしくお願いします。