日本の職業とは大分違うようです
前回より読んで頂きありがとうございます。
なぜか誇らしげに胸を張り、得意げなカナハ。
既に呼び出した部下に梅干しグリグリをされて泣いた事を忘れているらしい。
両手を拳に変え近付こうとすると、その場でガタガタ震え出した。
「さて、次の質問だ。ゾーンマスターとは一体何だ? 分かりやすく説明してくれ」
多分凶悪な笑みになっているだろうなぁと思いつつ、次の質問をしてみる。
勝手に部下扱いされた事にも腹が立ったが、知らない単語が出て来たのでそれを知ることの方が大切だ。
「はい! ゾーンマスターとは設定した領域の主人となる事で、部下を召喚したり、アイテムを生産したり出来る職業の事であります! 」
新兵みたいな回答の仕方だなと思いつつ、先ほどの会話の内容を考える。
部下を召喚ってどういう事だ? 俺みたいに攫って来るということか? アイテムの生産って事は製造業なのか? 製品の作り方なんてほとんど知らないぞ?
余程難しげな顔になっていたのか、カナハはわたわたしながら捕捉を始める。
「部下の召喚というのは領域の魔素によって部下を創り出す事だから、誰かを呼び出す訳じゃないわ。アイテムの生産も同じで、魔素によってアイテムが自動的に出来るだけだから材料を使って手作業で作る訳ではないから安心して? 」
必死に説明するカナハを見ながら、『魔素』とは何ぞやと考える。
とりあえずは万能物質とでも覚えておくことにしておこう……
「俺は魔素とやらを見た事も聞いた事もないんだが、それでも使えるものなのか? 」
やれる事なら頑張れるんだが、やれない事をやれと言われても困る。
営業では誤魔化したりしたら、後で困るのは結局自分自身だったのだ。
はっきり出来る事と出来ない事を伝える方がお、客にとっても自分にとっても1番良い。
…とは言っても、営業にはノルマという残酷な現実があるので中々上手く行かない事も多いのだが……
「大丈夫でよ。職業による補正によってその辺りは自動的に習得したことになるから問題ないわ。習熟するには経験が必要になるけどね。何が出来るかはステータスボード見た方が早いわ」
成る程、職業に就けば最低限の技術が勝手に出来るようになるのか……
なんてデタラメな世界なんだ。
それで慣れるには経験が必要だと…ステータスボードとか、益々ゲームみたいな世界だな。
「じゃあ、ステータスボードの出し方を教えてくれるか? 」
「『ステータス・オープン』と言えば出るわよ。表示で分からない事があればそこに意識を集中すれば詳細が出てくるわ」
簡単に出来そうなので試してみるとしよう。
少しワクワクしているのは仕方がない。
これでもゲーム好きで、特にRPGは大好きだった。
スーファ○の頃ゲームがが懐かしいな。
『ステータス・オープン! 』
少し大声になったが、無事半透明な板に文字が表示されている物体が出てくる……これがステータスボードと言うやつか?
よし! 確認作業だ。
(名前)
加藤 勝
人間
38才
Level 1
(出身国)
日本
(職業)
(有)者/ゾーンマスター
(ステータス)
HP 50
MP 0
筋力 30
知力 150
敏捷 30
器用 100
生命 30
精神 999
幸運 5
(スキルスロット)7/10
「レアスキル」
・異世界言語
・鑑定 Lv1
・偽装 Lv1
・アイテムボックス
「ノーマルスキル」
・農業 Lv1
・木工 Lv3
・商人 Lv6
(称号)
・異世界転移者
・悪魔を素手で倒した者
・ツインジョブ
(賞罰)
なし
言いたい事は色々あるが、先ずは職業について調べよう。
・(有)者
この世界の神々である天使長や大悪魔に試練を与えられた者が勇者である。
(有)者は異世界に来てすぐさま悪魔を屈服させた貴方専用のジョブである。
劣化型勇者とも言う。
レベル上昇時ステータスアップ(小)
経験値・熟練度増加(小)
鑑定
アイテムボックス
偽装
へぇーーそうですか、そうなんですか……なるほど。
この詳細とやらは余程俺を怒らせたいようだな。
……まぁ、無いよりはマシだし我慢するしかないか。
「ぷっ…何よ(有)者って。あんた世界から面白がられてるんじゃないの? ぷぷっ……痛い! 痛い! ごめんなさい。ごめんなさい! 」
途中に変な邪魔が入ったので、生意気な小悪魔の頭を脇でロックして絞り上げる。
悲鳴が聞こえるが無視だ無視!
・ゾーンマスター
領域を作りだし、その場を支配する者。
ダンジョンマスターに似ているが範囲が広く、空中・地上・地下に迄効果がある。
アンブロア大陸のみに適用されるジョブ。
爵位持ちの悪魔が就ける。
魔素操作能力向上
眷属召喚
領域操作
魔素製品作成
これはかなり強力なジョブだな。
しかし、疑問点が2つ程出てきた。
1つ目は『領域を作りだし』という所だ。
そんなものを作った覚えが俺には無いんだが……
2つ目は『悪魔が就ける』という所だ。
ボートを見ても俺は人間という種族のままだ…悪魔になんぞなった覚えは1つもない。
カナハに疑問点の場所を指差し説明を求める。
「うぅ……痛かった。全く女性に対して酷いわ…詳細におかしい所がある? 成る程…領域は私が作ったものね。あと、確かにこのジョブは悪魔が就く事がほとんどなんだけど今回は私があんたに領域ごと移譲した形になったからあんたがゾーンマスターになった感じね。それにしてもツインジョブって何なのよ? そっちの方がおかしいわよ」
ボートを見ながら俺に解説していくカナハ。
しかし、その解説で更に疑問が増える……一体これはどうなっているんだ?
「領域を移譲って何時やったんだよ? そんな事された記憶が俺にはないぞ? 」
多少問い詰めるような話し方になったのは仕方がない……見る事全てが異常なのだから。
まぁ、こちらの常識などは知らないから何が正しい事なのかすらも今の俺には分からないのだが……
「えーと…それはね、カトーを召喚したらすぐ私に攻撃したよわよね? それで私が謝って負けを認めたから、領域があんたに移動して、職業もそれにつられて移動したんじゃないかなーって……」
まさかの下克上 ⁈ 俺がやってしまったという事か? これは流石にカナハに酷い事をしてしまった気がする……
今日の12時に4話を投稿させてもらいますのでよろしくお願いします。