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異世界転移は初めてなんです

第1話を読んで頂きありがとうございます。


今回の主人公は前回名前だけ短編に出ていた加藤 勝となっております。



 何も俺の目に映るものは無く、何も俺の耳に届く音がない世界……


 そんな空間の中、俺の意識は唐突に覚醒する。


 先ずは体のあちこちを触り怪我がないか確かめてみるが、主だった箇所に傷は無いようだ。


 痛みも感じる箇所は無いのでとりあえずは安心か?


 いや、何も見えないし何も聞こえないのだから下手したら全身麻痺になっているのかもしれない……


 現状がどうなっているのか分からない為、不安で堪らない……


 ただ、まだ何かに引っ張られる力を感じるのでそちらに意識を向けて見る。


 わずかだが小さな点の様なものが見える!


 暗闇に閉ざされた空間にたった1つの光明が見えたことに喜びを感じ、引かれる力に逆らわないようその点に意識を向け続ける。







 点が丸に、丸が円に見えるぐらいに変わり始めた頃、その円から若い女性の声が微かに聞こえてくる。


「うーん、これでいいはずなんだけど中々現れないわね? かなり遠い世界に繋がっちゃったのかしら? それとも召喚途中で事故ちゃったのかしら? 」


 その言葉を聞いた瞬間『こいつ』が原因だと分かってしまう。


 何処の誰だか知らないが、こちらの事情をまるっきり無視して呼び出したんだ。


 絶対に仕返しをしてやるからな!




 円は近くで見ると摩訶不思議な文字が描かれた良くファンタジーの読み物に出てくる魔法陣のようだった。


 俺を引っ張る力はどうやらそこが起点であるらしく、ついに体がその魔法陣に触れる事となる。


 触れた瞬間に周りの景色は一変し、石材で作られた部屋の中で幾つかの光る玉が浮かぶ幻想的な景色が俺の眼に映る。


足元には先程の奇妙な文字が描かれた魔法陣があり、点滅するように発光していた。


「召喚の儀が成功したわ! 私ってばやっぱり天才なのね ♪ 」


 嬉しそうな女性の声が聞こえたがその声が先程聞こえてきた、この諸悪の根源であろう人物だと分かった瞬間、その相手に向かって俺は全力で走り出す。


 驚いている女性の顔など今の俺には関係なく、フルスイングした拳を女性の頭に振り下ろ……あれ? 女性というより女の子だ ⁈


 流石に子供に本気で殴る訳にもいかず仕方が無いので、拳を開き出来るだけスピードを緩めて頭を平手で軽くはたく!


「バッシィィィィン ‼︎ 」


 石材で出来た牢獄のような部屋中に軽快な音が響き渡る。


「ぐへぇ ⁈ ちょっと何なのよ!……痛い、痛い ⁈ ちょっと何をするのよ!私に対してこんな事をするなんて許されない事よ! 」


 はたいた後、反省の色が見られないので両の拳でこめかみをグリグリしてやる。


「人様を勝手にこんな所に呼び出して何様のつもりだ! 子供だからって悪い事をして反省もしないなら…こうだ! 」


 グリグリを加速させ更に威力をあげていく!


 涙目だった女の子はガン泣きへと代わり、謝罪の言葉を口にする。


「か、勝手に召喚してすいませんでしたー! もう2度とこのような真似はしませんので許してください〜」


 とりあえず謝罪の言葉が聞けたのでグリグリは止めてやる…が、離しはしない。


 なにせ変な力を使ってここまで連れて来た奴だ。


 隙を見せると一体どうなるか見当がつかない。


「勝手に呼んだことは謝ったので許してやる。だからさっさと元の場所に戻してくれ」


 元の場所に戻りたいのでそう言ったのだが、女の子はガタガタと震え出して何も言わない。


 お仕置きが足りないのかと頭を挟んでいる両の拳に力を入れると、バタバタと手足を動かして逃げようとする。


「逃げようとしないでさっさと戻してくれ。大事な仕事の途中なんだよ! 」


 そう言うと諦めたのか動きを止め、ボソボソと何かを呟きだした。


 よく聞こえないので頭を近づけて耳をすます……


「えーと……ごめんなさい。戻す方法なんて知らないのよ…」




 俺は無言で女の子をグリグリグリしながら、頭をそのまま状態のまま持ち上げる。




 その日、最大の悲鳴が部屋中に響き渡ったのであった…







「初めまして。悪魔公爵ヴェルザード・ラウ・ハンガの一人娘カナハ・ロウ・ハンガと言います。年は540才、今はトナウ領の管理を任されています……ねぇ、これでいいの? 」


 涙目で女の子座りをしている少女がこちらに反応を求めている。


とりあえず何もわからないので自己紹介を互いにする事にしたのだが……やっぱり日本じゃ無さそうだ。


 北欧系のような白い肌に青い瞳、金髪の髪を両サイドで纏めている。


 所謂ツインテールというやつだ。


 背は120cmを少し越えたぐらいか? 服装は黒で統一されたドレスで赤い靴を履いている。


 ここまでは地球にもいる美少女なのだが、両耳の辺りにある小さな羊のように丸まった角と背中でパタパタ動いている羽根、挙句にスカートの後ろから出ている尻尾。

 

 どう見ても悪魔の様な姿である。


 名乗りの時も悪魔公爵の娘とか言ってたしな……


「ねぇ…返事くらいしてよ! 睨まれたまま無言だと貴方の顔は怖すぎるのよ! 」


 あぁ……涙目から半泣きに変わりそうだな。


 話の内容はともかく、返事くらいはしてやるか。


「俺の名前は加藤 勝。普通の営業マンだ。それと挨拶はそれでいい……で、俺は元の世界に戻れないという悲しい状況なのも理解出来た。では質問に移る…どうして俺を呼んだんだ? 先ずはそれが知りたい」


 どうして俺がこんな所に来なければならなかったのか。


 先ずは理由を知らないと、対処のしようが出来ない。


 こちとら営業以外は田舎で多少の農作業と山の管理、日常工作くらいしか出来る事はないので戦闘だの軍略などを期待されてもどうしようもないのだ。


「あんたを呼んだのはこの私の部下としてゾーンマスターの仕事をしてもらう為に召喚したのよ! 」


 なぜか誇らしげに胸を張り、得意げなカナハ。


 全く勝手にこんな場所に呼ばれたかと思えば、訳の分からない仕事をさせる為だったとは……しかもゾーンマスターなんて仕事、どうすりゃいいんだ…


 俺は目元を押さえながら、ドヤ顔をしているカナハにどうやって説教をしてやろうかなどと、目の前の現実から目をそらすような事を無駄に考えてしまうのだった。





明日0時に3話を投稿させてもらいますのでよろしくお願いします。

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