表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/15

反省は要点だけをまとめましょう

 オイチの作った朝食は、野菜とハムを挟んだパンにコーン味のスープ、そしてモーのローストビーフにサラダと色とりどりだ。


 ジロウとフタバは争うようにローストビーフを口に入れ、タロウは丁寧にスープを飲んでいる。


 オイチはみんなのお代わりを絶え間なく運んでおり、カナハはパンを美味しそうに食べている。


 俺は哺乳瓶を持ってコタロウへと飲ませているのだが、時折カナハとオイチが俺の口にまで食べ物を運んでくれるので少しだけだが気恥ずかしい。


 朝食を終え、俺とタロウで後片付けをする間オイチとカナハに他の子の面倒を見てもらっているが、冷蔵庫のような魔道具の中身はかなり食材が減ってきている。


「参ったな……このままじゃ食材が持ちそうにないな。今日から森や山で食べれる物を探さないと……」


 俺が食材を見ながら頭を悩ましていると、カナハから軽い感じて答えが返ってくる。


「それなら畑でも作りましょか。この領地ならすぐに作物も出来るでしょうし」


 簡単そうに言うカナハを見ながら、俺はその自信はどこから出てくるのか不安になるのだった……




「カトー。あんた確か【農業】スキルを持っていたわよね? だったらこの辺を耕してみなさい」


「お前なぁ……こんな石だの木の根だのある荒地をそう簡単に耕せると思っているのか? 農業ってのはな……」


「いいから鍬を使ってみなさいよ! そうすれば分かるんだから」


 いきなりカナハは俺を館の西側にある荒地に連れて来るなり、そこを耕せと無理を言ってくる。


 ちなみに、他の子供達は近くの森に食べれる物を探しに行っている。


 俺もそちらについて行きたかったのだが、強引にカナハに連れて来られてこの有様である。


 どうやらこの悪魔は、世間の事を良く知らないようだ。


 俺はため息をつきながら世間の辛さを教えるため、鍬を一振りその荒地目掛けて振り下ろす。


 振り下ろした荒地にほとんど抵抗を感じないまま鍬は刺さり、鍬を引くと見事に耕された土が俺の目の前に現れる。




「何だこりゃ……どうなっているんだ? 」


 俺は自分の持つ鍬を【鑑定】して見るが鑑定結果は普通の鍬に間違いは無い。


「へぇ……レベル1だとこんなものなのか。そういう訳でカトーは畑作りを頑張ってね」


 それだけ言うと、この場を離れようとするカナハ。


 俺は後ろからカナハの頭を掴み、そのままこちらに引き戻す。


「な、何よ! 結構痛かったんだから! 一体何が不満なのよ? 」


「少しは俺に分かるように説明しろ! 畑が耕せるのは分かったが、それでも今から種を蒔いても実がなるのは最低2ヶ月近くは掛かるだろうが! 」


 俺の言葉に訳が分からないといった顔をしていたカナハだが、何か気づいたのか俺の顔を見ながら可哀想なものを見るような目でこちらに答えてくる。


「あのね……ここはあんたの世界と違って色々出来るの。多分あんたの所だと畑から実が出来るまで2ヶ月掛かるのかも知れないけれど、この世界では3日で実が出来たりするから。そちらの世界の常識は捨てた方がいいよ」


 カナハの言葉に俺はここが別の世界……いわゆる異世界である事を再認識する。


「な、なるほど。そういやここは俺の世界じゃないしな……しかし、そうなると俺はかなりハンデを負った事になるな。この年で常識を変えるというのは中々難しいからな」


 かなり苦しい立場になった俺はどうすれば良いのか考えてしまう。


「そこは子供達と触れ合いながら修正していくしかないと思うわ。あんた子供の事なら何でも出来そうだし……」


 確かに! 今の俺は子供達の為なら何でも出来る! そう考えれば、この畑作りも今の俺にしか出来ない仕事だ。


「分かった。俺は俺の出来る事をするとしよう。それでここを耕したら何を植えればいいんだ? 」


 カナハは悩みながら自分のポッケから小さな袋を取り出す。


「これは食物としてよく知られている種なんだけど、色々あり過ぎて私も把握してないのよ。あんたの【農業】スキルで適当に植えてくれるかしら? 」


 ……いきなりハイレベルな無茶振りだな。


「分かった。広めに畑を耕すから、出来るだけ全部植えてみる事にしよう……」




 こうして俺の異世界での開拓が始まったのであった。







 やり始めると簡単に耕せる所為か黙々と作業が進んでいく。


 20m程耕しては畝を作り、種類を纏めて植えていく。


 それを何度も繰り返すうちに、更に耕す作業が良くなっていく。


 自分の技術が目に見えて上がる事に俺は楽しみを覚えてしまい、耕す事に夢中になってしまう。




 気がつけば全ての種を植えてしまった俺は、水が必要な事に気づいてしまい館に水を運べるものがあるか調べる為に戻ろうとする。




『現在のスキルポイントで【生活魔法を所得する事が出来ます。所得しますか? 』


 いきなりアナウンスが頭の中に流れてきた俺は、魔法という言葉を聞いて思わずアナウンスさんに聞き返してしまう。


「そのポイントとやらを使えば【生活魔法】やらは覚えれるのか? 」




『本人からの同意により【生活魔法】を所得しました。詳細はステータスからご覧下さい』




「え? 聞いただけなのに所得したの? 何それ怖い」


 思わずアナウンスにもう一度聞き返そうとするが、既に反応が無くなり何も答えてくれない。


「仕方がない。ステータスを確認するか。『ステータス・オープン』……どれどれ、あれ? すでに【農業】がレベル3になってるぞ? ……まぁいいか……おぉ! 確かに【生活魔法】がスキルにある! 」


 俺は生活魔法という魔法の力を手に入れた事で喜んでしまう……が、その内容を見てへこんでしまう。


 トーチ

 灯りとなる光の玉を作る魔法。


 ブロウ

 そよ風を起こす魔法。


 ディグ

 土を掘る魔法。


 ウォータ

 水を作り出す魔法


 マッチ

 火花を作り出し火種とする魔法。


 クリア

 物や生物を洗浄する魔法。




 確かに生活に使える程度の魔法だな……




 俺は落ち込みながら【生活魔法】のウォータで畑に水を撒いていくのであった……










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ