休みの後は反省です
俺達がお風呂から上がった後にオイチとカナハがこちらにやってくる。
どうやら食事の後片付けが終わったようだ。
「お疲れさん。2人もお風呂に入るといい。とっても気持ちが良かったぞ」
「ありゃ、もうみんなお風呂から上がっちゃったんだ……残念だなぁ。仕方がないから2人で入ろうか?オイチちゃん」
「そうですね。こんどはいっしょにはいりましょうね、おとうさま」
どうやら2人はみんなと一緒にお風呂に入りたかったようだ……気が利かない父親で申し訳ない。
「そうだな、今度はみんなでお風呂に入ろう。それじゃ2人はお風呂に入っておいで」
俺の言葉に2人はにこやかに頷くと風呂場の方に向かっていった。
さて……俺は既に眠りかけているこの子達を寝室に連れていくか。
この1Fには寝室は無かったようだし、2Fに行かないと駄目かな?
「タロウ、悪いけど二階に寝室を探しに行ってはくれないか?俺はこの子達を運んで行くから、先に探してくれるとありがたい」
俺のお願いにタロウは黙って頷くと、二階へと向かって行った。
さて、ジロウとフタバにコタロウをどうやって二階へと運ぼうかと考えていると、タロウが走って戻ってきた!……何だかかなり慌てているが、何か不味い事でもあったのか?
「おとうさん! にかいはすごすきてぼくじゃどうしたらわからないよ」
……どうやら俺達の家はかなり変わっているようだ。
他の子供達をソファーで寝かせ、俺とタロウで二階の探索へと向かう事にする。
タロウの話だと、部屋の調度品が凄すぎて入っていいのか不安になるレベルのようだ。
俺も金持ちの家には全くと言っていいほど縁がなかったので、2人で恐る恐る二階へと向かう。
確かに階段にすらふかふかの絨毯が敷かれ、廊下のあちこちに光り輝く調度品が
置かれている。
俺とタロウは周りの調度品に触らないようにゆっくりと二階の部屋の扉を次々と開けていく。
「こんなへやだとねむれないよ〜」
「確かに……俺だとソファーでも良いぐらいだしな」
プルプル震えるタロウの肩を抱きながら部屋を色々見ていると、大きなベットを1つだけ置かれたシンプルな部屋に遭遇する。
優しい感じの色の壁に、春の緑を感じさせるようなカーテン。
部屋の真ん中にはどんと、10人以上が寝れそうな大型ベットがあるのみ。
「おとうさん。ぼくはここがいい!」
長男の目を輝かせてのお願いに、俺が嫌という事などありはしない。
寝ているジロウ、フタバ、コタロウを二階のベットまで運んでいると、いつの間にかタロウも一緒にぐっすりと寝ていた。
あんな大きな巨人相手に攻撃したのだ。
気が抜けて寝てしまっても仕方がないだろう。
俺は全員の頭を撫でて肩まで布団を掛けてやる。
「あら? みんなもう眠っちゃっているのね……本当にいい寝顔ね」
二階の部屋を確認しに来たオイチとカナハも、どうやらこの部屋まで来てしまったようだ。
「タロウがこの部屋がいいって言ったからな。俺達はここで眠るけど2人はいい部屋があったらそこにしてもいいぞ? 」
そう言った瞬間、オイチは俺の右側にカナハは左側に飛び込んでくる。
「わ、わたしもみんなといっしょがいいです……」
「あんた、嫁を一人で寝かせる気 ! 」
どうやらみんなでこの部屋で寝る事が決まったようだ。
「それじゃ、みんなで眠るとしよう……実は俺も、もう限界なんだ……」
二人にそう言って枕に頭を埋めると、俺は一瞬のうちに意識を失ってしまうのであった……
「あう、あう、だ––! 」
何かが胸に乗る感触で俺の意識は覚醒する。
どうやら本当にあの後眠ってしまったようだ。
「あう、あうう」
……どうやら俺を起こしてくれた元気な子はコタロウのようだ。
上半身を起こしコタロウを抱きかかえると、上機嫌になるコタロウを撫でながら周りの確認をしてみる。
左側にはよだれを垂らして爆睡中の悪魔が気分良さそうに寝ている。
その隣にはカナハに抱きつかれたタロウがうなされているが、どうやら悪夢でも見ているのだろうか?
右側には布団を蹴飛ばしたジロウとフタバがお腹を見せて寝ているのだが……オイチの姿が見当たらない ⁈
俺は布団から出ると、コタロウを抱いたまま二階を全て探してみる。
どの部屋も素晴らしい設備なのだが、今の俺はそれどころではない。
二階を探し終えた俺は1階へと階段を降りようとするが、下から優しいスープの匂いが漂ってくるのを感じてキッチンへと足を向かわせる。
食堂についた俺が最初に目にしたものは、割烹着に三角巾を被った純和風のオイチの姿であった……
「あら、おとうさま。おはようございます。おしょくじのよういはもうすこしかかりますから、よければおそとでくうきでもすってきてください」
にっこりと微笑むオイチにかなり動揺してしまう俺だが、胸元で動くコタロウのお陰で何とか冷静に戻れる。
「そ、そうだな。じゃあ少しだけコタロウと散歩でもしてくる。すまないが朝食の準備は任せた。あと、コタロウのミルクもお願いな」
笑顔でこちらに手を振るオイチに手を振り返し、俺は玄関から出て朝日を浴びる。
少し暖かい風に、黄色い太陽の朝日を浴びながらようやくここが現実世界であることを実感する。
コタロウは辺りを飛び交う蝶のような生き物が気になるらしく、近くを飛ぶ蝶に手を伸ばしては「キャッキャ!」と嬉しそうに喜んでいる。
辺りをコタロウと一緒に見て回り食堂へと戻ると、既にみんなが座って待っていた。
ジロウやフタバは目の前の料理を見て、うずうずしていたが、どうやら俺を待っていたようだ。
「みんな待たせて悪かったな。それじゃ、いただきます」
オイチの作った料理を前に俺は両手を合わせて頭を下げると、他のみんなも真似をする。
そうして、オイチの作った美味しそうな料理をみんな笑顔で食べていくのであった。




