やる事をやってから休みましょう
子供達の方がレベルが格段に上がっている件について……
深く考えるのは止めておこう。
それよりもゾーンマスターのレベルが上がった事で、何が出来るようになったのかそちらの方が気になってしまう。
『現在の拠点をグレードアップする事が出来ます。グレードアップをしますか? 』
考えているだけでアナウンスさんから出来る事を提示されてしまった。
とりあえず、カナハに聞いてから考えよう。
「カナハ、拠点がグレードアップ出来る事が分かったんだが、これはした方が良いのか? 出来ればメリットとデメリットを教えてほしい」
俺の言葉に、驚いてはいたものの、喜びながら詳しく教えてくれるカナハ……これでもう少し落ち着いてくれたら、言うことはないんだがな……
「拠点のグレードアップは大事よ! 何せ防御力が格段に上がるし、生活面も改善される。メリットが多すぎてあげるのが面倒なくらいよ。逆にデメリットと言えば……眷属を増やさないと回らなくなる事ぐらいかしら? 眷属を増やすと色々出来る事が増えるけど、面倒な事も増えるわ。食糧や衣服、住む所といった所ね」
成る程、確かに大きな家はお手伝いさんとかよく雇っているからな。
しかし、そうすると拠点がグレードアップしても食糧がネックになるな……何が食べれるかは【鑑定】を使えば良いとしても、量があるかどうかは別だしな。
「食糧に関してなら問題ないわ。『メルヘン』を選んで良かったわ。メルヘンなら食糧に関しては苦労する事が無いし」
カナハがホッとした様子で胸を撫で下ろしているが、俺にはそれがどういう事か分からない……まぁあそこまで言うんだ、何とかなるんだろう。
「なら、グレードアップで問題ないな? 」
「えぇ……ぱっぱっとグレードアップしちゃいなさいな」
俺の確認にカナハが太鼓判を押してくれたのでグレードアップを意識する。
すると、先程まであった普通よりやや大きい程度の石で出来ていた粗末な家が虹色に光り出し、目を開けていることすら辛くなってくる!
「何だこりゃ ⁈ 」
「おとうさん、いったいなにをしたの? 」
「おとうさま。うしろにさがってください! 」
「とうさん。なにもみえないよー」
「とうちゃん。きれいだねー」
「わー! あー! 」
「なるほどこんな感じでグレードアップするのね。初めて見たわ」
各々色々な感想を叫んでいるが、光は中々収まらない。
いい加減アナウンスに文句を言おうかと思った時、ようやく光が収まると外国でも中々見る事がない程の巨大な屋敷が目の前に現れていたのであった!
「おぃ……カナハ。グレードアップっていきなりこんな大きくなるものなのか? 」
俺は唖然としながらも、カナハに説明を受けようとするが返答が帰ってこない。
何かおかしいと感じた俺は隣を確認して見るが、既にカナハはそこには居なかった。
「カトー何してるのよ! さっさとこっちに来なさいよ」
声のした方を見てみると既に玄関前に集まっている子供達と、こちらを見て手を振っているカナハがそこにいた。
「あんたが来ないとこの扉が開かないみたいなんだから、早く来なさいよ」
頬を膨らませ不満そうな顔をしているがあれでも齢540才の悪魔だ。
近くでみると思った以上に重厚な作りの扉と、何の石を切り出して作られたかは分からない石造りの館の凄さを目の当たりにしてしまう。
紙一枚すら入る事を許さないこの館の石畳は、どうやったらここまで美しく出来るのか感動してしまうほどの出来具合いである。
館は二階建てなのか、ベランダのようなものまで見えている。
主に白を基調とした作りになっているが、汚れなどついたら気にしてしまいそうなほど輝いている。
「だから早く扉を開けなさいよ! 中が見れないじゃない! 」
カナハの言葉に我に返り、恐々(こわごわ)ながらも扉に触れてる。
俺が触った途端、扉はまるで押したように家の内側へと開いていく。
扉が開かれその全容が俺達の目に入る事になったが、みんな絶句してしまうほどの豪華さだ。
通路には赤い絨毯が敷かれ、部屋の中には多くの調度品が既にそろっている。
明かりも色々な所に設置されているが、電気で動いている訳でもないのに明かりに火が見当たらない。
正面には二階へと続く階段が目につくので、どうやらここがホールという事らしい……俺、こんな家には来たこと無いから正直何処から見ていけば良いのか全然分からないな」
「凄いわね! 私の実家並みの出来じゃない。流石メルヘン!戦闘力には不安があるけど、内政に関しては素晴らしいわ」
メルヘンが内政向きとは……一体他の設定はどうなっているのだろうか、逆に気になってしまう。
「ちなみに悪魔のゾーンマスターの設定は何が1番多いんだ? 」
「多分『弱肉強食』の設定が1番多いと思うわ。それ以外見た事ないし」
やはり魔族は武闘派という事なのかな?
ホールを一通り見て回っていると、「ギュルルルル! 」と凄い音が聞こえてくる。
思わずそちらに目を向けると、お腹を押さえたジロウがいた……そういや俺も昼飯から何もお腹に入れてないな。
「みんな頑張ったからお腹が空いただろう。台所に行って何かないか探してみるか? 」
俺の言葉に目に星を浮かべウルウルし出す子供達……すまん、そこまで我慢していたとは気が付かなかった。
俺達は一階の部屋を見て行きながらようやく食堂とキッチンの場所に辿り着く。
思ったよりも部屋の数が多かったな……ジロウとフタバはもうクタクタみたいだし、あるもので何か作るとするか。
キッチンの中は日本の電化製品のような物ばかりで【家事全般】を持つオイチすら戸惑うような物ばかりだ。
一人暮らしの時間が長い俺が、子供達の為に何か喜ぶような料理でも作ってみるとするか!
次回の投稿も2日後となります。




