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発端

 江戸時代、北陸地方の漁村に村長の一人息子と婚約した幸せいっぱいの少女がいた。


 しかし、横恋慕した海神を奉る神社の娘に騙され、神聖な供え物を食べてしまう。それが元で婚約は破棄、地主の息子は少女を愛していたが、後継ぎを残すためにも仕方なく神社の娘をめとる。


 愛する男の側を離れがたく、村外れで細々と暮らしていた少女だったが、10年20年経っても容姿が変わらない。少女を唆した神社の娘の老いは激しく、また何年経っても夫の心を占める若い少女の存在を強く妬む。


 ある日、神社の娘が村民に強く訴えた。

 いつまでも若い少女は人間ではない、あれはきっと魔の物だ、村から追い出すだけでなく、息の根を止めろ。

 身の危険を感じた少女は、同情した村民たちの力で遠く離れた尼寺に逃げ込み、事情を話し匿われる。


 それから数年後、若い頃に突然村を出た男が薬売りで財をなし、屈強な護衛を三人連れて戻ってきた。男は少女の幼馴染だった。


 幼馴染の男は、神社の娘が少女を騙して供え物を食べさせた現場に居合わせたのだった。隠れていたが見つかり、力のある巫女でもあった神社の娘に海神の呪いをかけると脅され、口を閉ざして村を出る羽目になった。

 それからがむしゃらに働いて金を得たが見捨てた少女への罪悪感を忘れられず、風の噂で少女が村八分になったことを聞き、急ぎ舞い戻ったわけである。


 その話を皮切りに、少女の善行や清貧さ、今は村長となった元婚約者の男への深い愛情などが明らかになり、また神社の娘の傲慢さや悪事が村民から次々と暴かれる。人々から糾弾された神社の娘は発狂し、崖から海へ身を投げた。


 元婚約者の男は少女の幼馴染の男と共に少女の行方を追う。ようやく尼寺で仏心に帰依していた少女を探しだし、二人は懺悔した。

 少女は、人魚を食べて不老不死になってしまったという、尼寺近隣に伝わる八百比丘尼伝説を語る。そして、鱗がついた自分の足を見せた。若さを保つ少女が食べた供え物が何だったのかを悟り、愕然とする男たち。それでも、贖罪のためにも未来永劫少女を支援することを誓う。


 男たちは互いの息子と娘を結婚させ、少女とその秘密を守ることを厳命した。各時代で少女を表だって助ける者のことを 「後始末」、情報収集など影に動く者を「薬屋」と名付けた。


 その異質さ故に少女は一ヶ所に留まれず、日本中をさ迷うしかない。その際「後始末」と「薬屋」が全てを請け負った。古い住み処から彼女の痕跡を消し、彼女の噂を別の噂で一新し、新しい住み処を手配する。


 少女は長く生き続けるうちに養ってきた「人や物の本質を見抜く目」で助言する。そこからまた莫大な富が生まれ、「後始末」や「薬屋」の家は繁栄していく。


 そんな少女と「後始末」と「薬屋」の関係は、現代でも続いている。

次話から現代になります。

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