第8話 【Conspiracy】
足音もなく、足跡は残して。
最近は色々なことが起きすぎている。
祐はそう思った。師との出会い、俊の件、華憐達の件、師が捕まった件。
こういう時にはきっと何かが起こるだろう。これはきっと何かの前兆だ。
少し気を付けていかないと、と気を引き締めながら教科書を開く。
今は3校時目の授業中。集中しなければと、教師の話に耳を傾ける。蝉の声がうるさい午前、窓から涼しい風が入り込んでいた。
*
「あと何人くらいだ?」
東京都F区のとある研究所。室内だというのにサングラスをかけ、脇にコートを抱いた男の声が響いた。
「おそらく、あと50人以上は必要かと」
ロックがかかった鋼鉄の箱。中に入っている大きな樽をなでながら眼鏡をかけた女が答えた。
「…そうか」
男は樽の前まで近づき、じっと見つめる。
「暴食…奴の瑠魂を取り込めば…」
「奴を見つけるのは難しいかと」
「……最低限の要員を集め、捜索しろ」
「ですが」
「忘れたわけじゃないだろう。喰神を復活させること」
男はコートを着て、煙草に火をつけた。
「それが我々『家』の役目だ」
*
時は進み、下校時間。
「おい、祐!」
遼太が置いていくなと言わんばかりに走ってきた。
「これから翔人んとこ行くんだよ!お前も暇だろ?一緒に行こうぜ!」
が、その時玄関で駆が合図するのが見えた。
「ごめん。今日はちょっと用事あって」
「なんだよー!ま、いいや!じゃあな!また明日」
「うん、じゃあね」
駆の所にかけ寄ると、華憐達もいた。
「お前達は先に帰っていろ」
「俺は祐と少し話がある」
「?……分かりました」
彼らと別れ、祐と駆は別の道をゆく。
「話ってなんだろーな」
敢が呟く。
「さあな。別に俺らが気にすることじゃねーだろ」
春が返した。しかし敢は、「なんか気になるんだよなー」と、言っている。
路地裏。前に祐が俊と初めて会った所だ。そこで華憐は、不穏な気配を察した。
「少し取り調べをしていいかな」
後ろを振り向くと、スーツ姿の男が立っていた。
直観的にSEOだときずいた彼らは、たがいに顔を見合わせる。
「ちょっとこれを手にはめてもらいたいだけなんだ」
(この口調。おそらく、気が付いている)
ブレスレットのような物を取り出す男。恐らくこれは魂喰いにのみ反応する特殊な装置。
「いや、今は少し忙し……」
ドォォォン
華憐が応えるより早く、敢が男に攻撃していた。
「敢!」
しかし男は、その攻撃をかわして笑みを浮かべていた。
「かかれ」
すると潜んでいた2人がSEOWを展開して襲いかかる。
(なぜ気付かれた?)
そんな疑問が頭をよぎったが、今は避けるのが優先。
が、一瞬の隙が命取り。華憐は弾丸を腹にくらい、体制が崩れる。
「かはっ………」
「さすが新しいSEOW…威力が倍増している」
有原がそう呟き、間髪いれず工藤が攻撃しようとする。
「くそっ………」
だが間一髪で春が華憐を抱えて避けた。そして敢、春、歩がそれぞれの瑠魂を出現させる。
「フフ…さあ、来い……………!」
鍵山の目に、4人が妖しく映った。
大きな音がしたのが聞こえて、駆と祐は何かあったと察した。
それが仲間達のことだと、直感した。
「………!?」
「行くぞ!」
話の途中だっだが仕方がない。祐も駆に続いて走り出した。
路地裏。妙な胸騒ぎがする。
「祐!つけろ!」
駆に突然投げ渡されたのはガスマスクだった。
「ガスマスク…?」
「いいからつけてろ!!」
祐は言われたままにそれをつけ、駆もつけた。
角が見えてきた。
角を曲がった先にいたのは、縄のようなSEOWで縛られた華憐達だった。
「………………!」
居場所を守るため。