第48話 【Rober】
再会した2人を待つものは――?
喜べばいいのか、悲しめばいいのか、分からない。
ただ、驚きだけがそこにあった。
ずっと大事にしてきた親友。唯一無二の親友。
上遠野遼太。
(ありえない)
だって、こんなところにいるはずないじゃないか。遼太が住む街はここから遠い。
そこからわざわざこんなところまで来るわけがない。
(そうだ、さっきと同じだ)
これは幻覚だ。疲れた時というのは、よくこんなものを見るのだ。
そう思いたい。
遼太はこちらに歩いてくる。
そして、僕の肩に手を置いた。
触られた感覚が肩にある。夢じゃない。幻覚でもない。
(どどどどど、どうして、え?)
思考回路がおかしくなりそうだ。
なんでなんでなんでなんで。
なんでここにいる。
「どうして……」
口から声が漏れだした。
遼太は無言で、瓦礫の上に腰かけた。
座れというように、目で合図してきた。
僕は同じようにして座った。
「遼太……なんでここに?」
自分が質問される前に質問した。
もし僕が同じ質問をされたら、答えられないだろう。
『魂喰い』だからなんて、言えるはずもない。
「もう、隠さなくていい」
しかし遼太は、質問に答えず、代わりにさらに衝撃的な言葉を発した。
「お前が魂喰いだってことは、もう知ってる」
平然と言った。何事もないように。
「は?」
嘘だ。そんなわけない。だって遼太は今まで、昨日まで、ずっと一緒にいたのだ。
僕の正体を知っているような素振りは見せなかった。
ありえないありえないありえないありえない。
やっぱり、これは幻だ。
「祐」
呼ばれたが、応えることができない。無意識に呼吸が荒くなってくる。
「嘘だ……」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
「だだだだって、だて、だって、りょ、遼太がががが!?」
これは悪い夢だ。悪夢だ。
きっとそうだ。
そうであってほしい。
遼太はもう一度「祐」と僕を呼び、何かを決心するかのように深く息を吸い、
「俺は『Rober』だ」
と言った。
「ろ、ばー??」
*
上遠野遼太は人間ではない。
『魂喰い』でもない。
何かを奪い続けなければいけない『Rober』だ。
魂喰いの進化の過程で生まれた生物とされているが、はっきりしていない。
そもそも、進化か退化かも分からない。
ただ魂喰いとは異なるところがいくつかある。
Roberは、魂喰いとは違い『魂』以外でも喰うことができる。
というよりは、この世に存在する全てを『奪える』。
『喰う』のではなく『奪い』、『吸収』するのだ。
そうすることで、食欲から始まる様々な欲が満たされる。
そしてもう一つの違いは、魂喰いは喰った魂を『瑠魂』として具現化することができるが、Roberはできない。そのかわり、身体能力を『奪った』分だけ高めることができる。
そしてさらに特徴を挙げれば、『Rober』の魂を喰った『魂喰い』はRoberの能力を増幅した状態で引き継ぐことができる。
遼太の親は、できるだけ真実を隠そうとしてきた。遼太には普通の人間として生きてほしかったのだ。
しかし、いずれは知らなければいけない。いつかその能力がきっと自分を守ってくれる。
遼太は最初は驚いた。だが遼太は自分が特別な存在だということが分かって嬉しかった。
親は遼太が能力を悪用しないか不安だったが、遼太はそんなことはしなかった。
しかし惨劇は起きた。
『Rober』の能力を狙った魂喰いが、遼太の両親を暗殺し、その魂を喰ったのだ。
帰宅した時偶然その現場を見てしまった遼太は、激昂してその魂喰いの命を奪った。
小学校に入学して、近所に住む佐々木祐に出会った。
でも、遼太はこの少年のことを知っていた。
『特殊な事情』により祐は両親を失っていた。そして元人間だった。
そして幼い祐が自分の運命を呪い、自殺しようとした。
そんな祐を保護したのが、祐の父親である真守の友である師だった。
師は最初祐の扱いに頭を抱えた。
魂を喰わなければ生きていけないのに、食べたくないと言ってきかないのだ。
このままでは餓死してしまう。
今は亡き祐の両親が繋いだ命を無駄にするわけにはいかない。
師は無理矢理にでも魂を喰わせた。泣き叫ぶ祐に心を痛めながら、それでも死なせたくなかった。
『お前は生きなきゃいけない。お前の両親のためにも』
しかしある時祐が消えた。
突然失踪したのだ。師は必死になって捜した。
すると、近所の河原で見つかった。
丁度飛び込もうとした時に、危機一髪で見つけ出したのだ。
正直師の手には負えなくなり、最後の手段にでた。
同じく佐々木真守と友であった遼太の父親は、祐の記憶を奪った。
祐に残されたのは自身の名前と、魂喰いだという事実だけだった。
師は祐を手放し、一人で生きていかせることにした。
自分が祐自身の違和感や重荷になるわけにはいかなかった。
いつか成長した祐を見たいと願って。
祐と友になった遼太は、祐が魂喰いだという部分に触れないようにしてきた。
同じく自分の秘密にも触れられないように。
それでも遼太は覚悟をしていた。
いつかきっと、自分の秘密を知られる時が来るだろう。
それは運命のようなものなのかもしれない。
もしそうなった時は、記憶を奪わずに、ありのままの現実を受け入れたい。
そしてもう一つ。
両親も記憶も失い、それでもなお必死に生きる祐を今度は自分が救ってみたい。
佐々木祐を構成する歯車になりたい。
親友として、どんな時でも力になってやりたい。
ずっと、知ってた――。




