EP1
周囲から寄せられる視線にぞわぞわとしたものを感じ、僕は一体何を頼んだのかそのラブなんちゃらというパフェについて遠藤さんに聞くことにした。
「ねぇ遠藤さん、一体何を頼んだんだい」
何かとんでもない物を頼んだのではなかろうか。
「何ってラブカップルパフェよ。聞こえなかった? 」
なんだかとんでもないメルヘンな物を頼んでいたようである。
愛も詰まっていなければ正式にカップリングもしていない僕たちがこれからそのラブカップルカフェとやらを食そうとしているのだから確かに驚くのも無理はない。
店内を見回していると壁に貼られたそのラブカップルパフェという名を謳う物の広告が目に入る。
"最後まで二人で食べきることが出来たら無料"
お値段なんと1杯4000円。
実寸ではないのだろうけれどそれ相応の大きさの物が出てくるようである。
「遠藤さん、実はそこまで甘い物を欲していないんだ」
今ならキャンセルが出来ると思い、僕は言った。
「何を言っているの、ここに来たカップルはこれを頼むって決まっているのよ」
しかし、遠藤さんの意思は変わらなかった。
そして他のカップルを見ても一組すら頼んでいる様子はないあたり、どうやらそれは決定事項ではないらしい。
「お待たせしました、ラブカップルパフェです」
しばらくしてから普段は僕も片手で珈琲を運んだりするトレーを両手でしっかりと持って力がありそうなイケてるメンズ店員がやってくる。
その上にはサッカーの優勝トロフィーを連想させるサイズの並々と生クリームやらフレークが注がれたパフェがずっしりと乗っかっているではないか。
「これは……」
無理だろうと思わずつぶやいてしまいそうになる。
「さぁ斉藤君、頂くわよ」
しかし遠藤さんは明らかにカレー用サイズのスプーンを手に取って容赦なく一番上に置かれているハート型のチョコレートを真っ二つにして突き刺した。
僕も胸やけがするのと共に心が折れそうだよ遠藤さん。
手を付けようにもなかなか付けられない僕に対して着々と食べ進めていく遠藤さんはやっぱり女子だったのかもしれない。
甘い物は別腹とはよくいったものである。
「あら、全く食べていないじゃない」
するとなかなか手を付けない僕を見かねてか遠藤さんは口元に生クリームが付いた状態で問いかけてくる。
その姿、あざとい。
「そうね、パフェ童貞の斉藤君にいきなりこのサイズは酷だったかもしれないわね」
いや、そうじゃない。そうじゃないんだよ遠藤さん。
パフェくらい僕だって食したことはある。
だけれど僕の知っているパフェとはあくまでも一人前のサイズであって、まるで鍋の如く同じ器を突きあって食べる物だとは記憶していないだけなんだ。
「仕方ないわね。ほら、口を開けなさい」
すると遠藤さんは先ほどまで自分で食べ進めていたスプーンで一掬いして僕に向けてくるじゃあないか。
これは俗にいうアーンというやつだとさすがに理解した。
「や、自分で食べられるよ」
さすがに理解したところで照れ隠しでもするかのように僕は自らスプーンを手に取ってパフェに差そうとした。
しかしそれは遠藤さんによって遮られることとなる。
「斉藤君は関節キスとか気になるタイプなのかしら。安心しなさい、これからこのパフェは二人の唾液に塗れていくのだから一緒のことよ。ほら、あーん」
言い方というものがあるとは思うのだけれど、遠藤さんに恥じらいも何もなかったようで何よりである。
僕は遠藤さんが手に持つスプーンを無視して自分で掬ったパフェを食べようと口を開いたその時、自分のスプーンよりも早くに遠藤さんが押し込んできた。
「むぐ!?」
甘ったるい生クリームの味が口の中全体に広がっていく。
その生クリームにかき消されてしまったのだろうか遠藤さんの唾液は、特別何も感じはしなかった。
やがて僕の口から引き抜いたスプーンを見て遠藤さんは言った。
「どう? 美味しいでしょう? さぁ、この斉藤君で塗れたスプーンで私が今から食べるから見ていなさい」
え、なにこの羞恥プレイ。




