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日陰男と高嶺の花の恋愛ジジョウ  作者: ナナモヤグ
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EP7


 二日連続で立て続けに女の子を家に入れることになろうとは誰が予測出来ただろうか。

 スリッパを買う時間的余裕すら僕には無かったというのに。


 ポケットに入れていた鍵を取り出して玄関を開けると時間も相まって真っ暗な部屋がお出迎えしてくれた。

 手慣れたように電気を付けてまずは自分の靴を脱いでから木下さんを奥のベッドまで連れて行く。

 気絶ってこんなに意識を失っている時間が長かったかなと思いつつも、気絶というより木下さんの場合ショートしたといった方が正しいかと思い、それなら修復するまでに時間がかかるだろうと納得できるのもの彼女ならではなのかもしれない。


 木下さんをベッドで横にしたあと、靴を脱がして玄関にへと持って行く。

 寝ている人の横でテレビを付けるのもなんだか気が引けるし、それならばパソコンにしようと電源を付けて先にシャワーでも浴びるかと思い立ち、僕は浴室へと移動した。


「はー……」


 温かいお湯を浴びると腕や足に溜まっていた乳酸が抜けていくような感じがして思わず声が漏れる。

 久々に重労働をしたからね、身体も随分と驚いたことだろう。


「しかし今日、僕はどこで寝ようか……」


 シャンプーをシュコシュコとボトルから手の平に出しながら呟いた。

 寝る場所がない。

 木下さんをあのままおいておくわけにもいかず、連れて帰ってきたのは良いものの僕も店長と変わらず、他人が寝るようなスペースを持ち合わせていない。

 いや、正確には他人が寝ることを想定した作りにしていないのだ。

 少しはやいけれど、毛布を出して床にひくしかないかと頭を洗いながら考え、そうしようと決めた。


 木下さんの彼氏はこの状況をどう思うだろうか。

 知った仲ならまだしも、疑われても仕方が無いようなシチュエーションになってしまっていることに少し後悔している。


「なんだか、らしくないなー」


 遠藤さんに出会ってからというものの、静かで穏やかだった日常が徐々に騒がしくなり始めていることは薄々と感じて来ていた。

 けれど、それは同時に僕自身も少しずついい方向なのか悪い方向なのかは分からないが変わり始めているのかもしれない。

 嫌だと思ったら何を言われようとその場を後にしていたというのに、今回の件だって結局引き受けてしまった。

 木下さんの建前や心配とは別に、彼氏に見られたら面倒くさいという自己保身がこれまでの中で何よりも一番の決断要素だったというのに今回は引き受けてしまった。


「面倒くさい、動きたくないが僕の良いところなのに。ねぇ、要君」


 その場にはいないと分かっているが要になんとなく問いかけてみる。

 三猿――見ざる、聞かざる、言わざるというが、僕の場合は面倒くさいでござる、動きたくないでござる、寝たいでござるだよね。うん、自己分析は得意なのさ。

 ただ、そろそろ面倒くさいだけでは周囲の環境についていけなくなる頃合いなのかもね。


 キュッキュッと水道のハンドルを回してシャワーを止める。

 全身の水を切ってから浴室の扉を開けてバスタオルを取り、全身を拭き終わった後は洗濯機の中へと放り込んだ。

 下着をはいて就寝用のジャージを一先ずズボンだけ履いてTシャツを手に取った。

 そろそろ寒くなってくる時期ではあるけれど、お風呂上りはまだまだ湯冷めするような気温ではないのだ。

 そうそう、僕はお風呂上りに髪を乾かさない派なのでドライヤーの音を立てるようなことはないから安心してくれたまへ。

 僕とて安易に眠る木下さんを起こすような真似はしないさ。

 起こしてしまうと間が持たないからね!!


 そんな僕の気遣いも他所に、冷蔵庫で何か飲もうと生活スペースへ移動した時の僕の顔はさぞ面白い顔をしていたことだろう。

 

「さ、斉藤さん……!? えっ? ……えっ!?」


 だって木下さんが起きていたのだから。


「やぁ、木下さん。どこか具合の悪いところは無いかい」


 どこか具合が悪いとか訪ねるではなく、まずはこの見苦しい男にしては華奢な体をTシャツで隠すところから始めなければならないのだけれど、起きちゃったんだね。

 もうね、余裕がなくて、無さすぎてシャワーでも浴びてく? さっぱりするよ!!なんて気の利いたことが言えない。

 とはいえ、ここは僕の家である。

 主導権は僕にあるのだといわんばかりに当初の目的であった冷蔵庫を開けて牛乳を取り出し、コップに注ぐ。


「木下さんも何か飲む? 生憎とソフトドリンク的な物はないのだけれどココアとかコーヒーなら作れるよ」


「え!? ……えぇ!?」


 うーん、木下さんが良い感じに混乱している。

 これは四回目フォースショートも近いかもしれない。


「まぁまぁ、焦らないで落ち着くまでゆっくりするといいよ。後で成り行きは話すからさ」


 かくいう僕も注いだ牛乳をグイッと口に含むが、味がしない。

 若い男女が屋根の下で二人きりなんてシチュエーションが完成してしまったのだから柄にもなく緊張しているというやつである。

 そういえば昨日も遠藤さんと同じシチュエーションになっていたはずなのだけれど、今はなんだか凄く初々しい感じがするなと思った。

 しばらくしてから結論が導き出され、「あぁそうか、そうだ。昨日は遠藤さんがあまりにもサイコパス過ぎて忘れていたんだ」と、遠藤さんが僕を緊張させまいとしてくれたことなのかどうかは定かではないけれど、初っ端から余裕を持って接することが出来ていたのである。


 それがどうだろう。

 遠藤さんと木下さんではこうも違うものなんだとまざまざと感じている。


 飲みたい物を言ってはくれなかったけれど、大体の人は好きなんじゃないだろうかという憶測の元でココアを入れてやることにした。

 口も乾いていることだろうしね。




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