EP11
「あ、間に合ってますので」
チラリと横目で僕を見てくる遠藤さんに対して間髪入れずにお断りの返事をした。
遠藤さんをお礼に貰ってどうするというのだろうか。
仮に、なんというか……お付き合いをする形になるとするのなら、僕の大学生活は以降平安は無いといっても過言ではないだろう。
あくまでも遠藤さんとしても本気ではないのだろうけれど。
「ちょっと斉藤君。少しくらい考えてくれてもいいのではないかしら?」
ムスッとした表情で仁王立ちしている遠藤さんからの圧が怖い。
何故そこまで飼い猫に噛まれたような顔をするのか、僕が承諾するような事を言えばきっとからかってくるに違いないというのに。
「リスクヘッジを踏まえた上での回答だよ」
「……それはあなたは複数に目を付けているという解釈をしていいのかしら?誰かしら?木下さん?木下さんくらいしか私には思い浮かばないのだけれど。そう、木下さん――、貴方って随分とプレイボーイなのね」
確かに使い方を間違えたと思ったけれど、必要なところが理解されず一部だけを汲み取られてしまったようだ。
あと、木下さん推しが強すぎやしないだろうか。
確かに僕も知っている女性はそこまで多くはないだろうけれど、そこまで視野を狭めるほどに僕の周りには女子がいなかったのだろうか。
「……ごめん違う、そういう意味じゃない」
あと、圧力が何倍にも増したような気がする。
「じゃあ一体何だというのかしら?私というものがありながら他にも手を打っておこうと貴方は先ほど自分の口から言ったのよ?」
「一体僕はいつから遠藤さんの所有物になったのだろうか」
「えっ、違うの?」
「うん、違うよね?」
違うよね……?
そうだと言ってよというふざけたフレーズが頭に浮かんでくる僕は、この件から早く話を逸らしたいんだなと本能が求めているのだと悟った。
「お父さん。私、斉藤君に弄ばれて勝手に勘違いしていた、ただのメンヘラ女になってしまったみたいだわ」
一体なんという報告を親にしているのだろうか。
「それは大変だな」
それは大変だよね。大変だけれど、娘にもっと言ってあげるべきことがあると思うんだよね。




