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日陰男と高嶺の花の恋愛ジジョウ  作者: ナナモヤグ
41/87

EP3

――…――


「君といると本当に様々な事に巻き込まれて来たものだけれど、今回の件についてはあまりにも呆れて僕は頭を抱えるしかないよ」


「一樹まで何言ってんだよ。話し合ったところで分かって貰えないなら実力行使しかないだろ?」


「別に実力行使というところに関しては否定するつもりは無いけれど、それは実力があっての話であってね。僕はソフトテニスならまだしも硬式なんてネットにすら届かないからそのつもりでいてよ?」


「あぁ。一樹は前で止めてくれれば問題ない。後ろは任せておけ」


 その自信はどこから来るのか問質といただしてみたいものだけれど、なんでもかんでもこなせてしまう要君に一度痛い目を見てもらうのも悪くない。

 むしろ個人的にちょっと要が失態する姿を見てみたいと思わなくもない。

 きっと顔を赤くして後悔することになるだろうと想像がつくのであるが、現時点において僕が後ろ指を差されているのは明らかである。

 それは何故か。


「おい、橋爪って確か部長に勧誘されてた奴だよな……?」


「確か、地方の大会ではかなり有名だったらしいぞ」


「何?アイツ硬式テニスも出来るのかよ。しかもイケメンかよぉ」


 周囲の要に対する期待値は上々であるのに対し――


「ペアがあのジャージで大丈夫なのかよ」


「いかにも運動してなさそうな感じだよね、橋爪君カワイソー」


「あきらかに寝起きじゃね?」


「こりゃ公開処刑で決まりだな」


 被害者である僕がさらに追い討ちを掛けられる始末であるからだ。

 全く、無謀な勇者の為に汚名を被るにもほどがあるっていうものだよと思いながらも修ちゃんから受け取った2本のラケットと使い古されたテニスシューズに目をやった。

 はぁ、と分かりやすく溜め息をつきながらソフトテニスのラケットとは形状が違う借り物のラケットは正真正銘硬式テニスのものでありガットの張りも堅ければグリップも大きくて握り方がイマイチ定まらない。

 くるくるとラケットを回しながら手にフィットする場所を探していると要から声が掛かった。


「一樹、前衛に付いたときは正面からボレーはしない方がいい。スピードと球の重さにやられるぞ」


「カットボレーをしろってことでしょ。それくらいの知識はあるさ」


「さすがだな。そういえば一樹とダブルスを組むのって初めてだよな」


「そうだけど、おだてても僕は何もできないよ。そもそもカットボレーとかほとんどしたことないし。……ところで要は私服だけど動けるの?」


「ストレッチジーンズだから問題ない」


「あ、そう」


 なんだか私服でテニスをするのってストリート風で格好良いよね。実用性は皆無だと思うけれど。


「おーい君達ぃ、乱打はしなくて大丈夫?」


 シューズに履き替えて色々と事前話を要としていると既にコートに立っていた今回の相手であろう人たちが挑発するような声調で呼びかけてきた。

 そんなに焦らなくても結果は見えているのだから少しくらい日を拝む時間をくれてもいいじゃないかと思うものだが、確かに乱打はしておきたいところである。

 まともな打ち合いになるとは思わないけれど。


「お願いします」


 僕の代わりに全く挑発を気にしていないかのように要が返事をした。

 

「じゃあ早く入ってくれよ、この後練習もあるからさぁ。君たちに付き合うほど俺たちも暇じゃないんだよねぇ」


 大人しく僕と要はコートへと向かい、サービスラインに立つ。

 久々に選手目線で見た奥行きがありそうで意外と狭いコート。下を見ると高校最後の大会でも踏んだ事がある人工芝に、綺麗に引かれた白線の塗料が懐かしさと共に僕の視覚から脳を刺激する。

 

 

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