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日陰男と高嶺の花の恋愛ジジョウ  作者: ナナモヤグ
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EP5

「人ごみが苦手というのは分からなくもないが……、お嬢様のせっかくの機会なのだぞ?斉藤」


どうも日笠さんは遠藤さんを軸に物事を進めている節があるらしく、つまりお前の心境なんて知らん、何故来ないと言っているのである。

何故と言われても、行く気がないからとしか答えられないのだが以前から日笠さんに詰められると気が滅入ってしまう。

ごりごりくるタイプは得意じゃないんだよ。


「そういえば!遠藤さんのいつもの親衛隊ファンみたいな人達が今日はいないんですね」


「あぁ、彼等か。どうも私がお嬢様の傍にいると近づきにくいようだ、私は構わんのだがな」


なんとか話題を逸らそうと、遠藤さんに通ずる話を振ってみる。

確かにこんな最強の護衛がいたら近づきたくても近づけないよね、でも親衛隊ファンを挙げているからには少し情けないような気がしないでもない。


「それに横断幕を作るか何かで忙しいようだったぞ」


「それはまたご苦労様なことで」


やっぱり日笠さんには話題を摩り替えることが一番の効果を発揮し、なんとなく扱いにくいようで扱いやすい人だとは思う。

しかし、もっと厄介なのがそのご主人様であることに違いはなかった。


「ところで、斉藤君。色々と考えているみたいだけれど、結局のところ来てくれないのかしら?」


言葉を選びながら話題を逸らそうとしていたのに台無しだよ遠藤さん。

口元がつりあがっている辺り、今の言葉選びはわざとだよね遠藤さん。


「えぇと、どうしようか……、要?」


横に突っ立っていた要にだけ聞こえるように問いかける。


「そこで俺に聞く?」


「いやもう、要が行きたいなら着いていくからさ」


「一樹にしてはえらく投げやりだな……」


こうなってしまったら何か理由でもつけないと頑なに僕の脳が行く事を拒んでしまう。

僕の返答に苦笑いしながらも要なりに気の利いた回答を遠藤さんに言い渡してくれた。


「あ、遠藤さんちょっといいかな。一樹もこの後は特に予定がないみたいだし、俺と一緒に行くことにするよ。でも人ごみが苦手なのは本当だから離れから見ることになるかな」


やるじゃないか要君。たまには君を頼ってみるのも悪くないぞ、要君。


「本当ですか、これは一層頑張らないとですね」


その返事を聞いてふふっと小さく微笑む遠藤さん、なんだこの人可愛いぞ。

だがこの遠藤さんは作り物なのだと不覚にも可愛いと思ってしまった自分に言い聞かせる。


「ではどうだ斉藤に橋爪。私と一緒に観戦しないか、場所なら用意できるぞ!」


両手をぐっと握り、ふんすと興奮気味に日笠さんが申し出てきた。

一人は寂しいのだろうか。いや、この人に限ってそんなことはないだろう。


「そうですね、せっかくなのでお言葉に甘えます」


ともあれその好意を素直に受け取る。ここまで来てしまったら人ごみなどこの際知ったことではない。

心を無にして純粋にテニスの試合を観戦することだけに精神を集中させてみせようではないか。


――しかしこの選択が後々、後悔することになるとは思いもしなかった。



所変わってあれから遠藤さんと日笠さんに連れられて我が大学のテニスコートへと現在やってきている。

さすがテニスの強豪とだけあって、人工芝オムニコートは丁寧に整備されハゲているところは見当たらないし、ナイター設備まで完備されていた。

ほどよくスプリンクラーで水撒きをされたコートに陽が辺りキラキラと輝いて見える。

基本的に学校での練習はクレーコートだった僕にとってこの光景は目を光らせるには充分であった。

どうやら要も同じようなことを考えているようで顔が綻んでいる。


「見ろよ一樹!やっぱオムニだよなぁ」


「そうだね」


こんな環境下でソフトテニスならやってみたいものだと率直な感想を抱く。


「はは!なんだかんだ楽しそうで安心したぞ」


「こう見えて俺も一樹もテニスを齧ってたものでして。あ、テニスといってもソフトテニスなんですけどね」


「そうだったのか、なら君たちは純粋にお嬢様のテニスを楽しめるな」


別に遠藤さんのテニスが楽しみではないのだけれど、そりゃあ下賎な考えを持ってきている人がほとんどだからね、僕達のようにテニスが見たくて着ている人なんて極少数だろう。

じゃないと広報でもない人がカメラを準備したりしないもんね、四宮君。

僕は一番目立つところにいた四宮君を見て、少しだけ肩を落とすのであった。

まぁテニスに興味はないと言っている様なものだったもんね、むしろそこまでオーバーだと逆に清清しいまである。



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