黒葬
掲載日:2015/02/27
満月の晩に謙信は黒い墓を発見した。その墓は一般の通例ともいえる大理石を使用せずに、古木をボヤで黒色に染めたもののようだ。つまり、墓は木材で出来て、そのうえ今にも崩れ落ちそうなほど朽ち果てている。それのみでなく砕けた石をまばらに埋め込まれていて唯一の洒落た装飾となっている。その内の一つの石には謙信という名前がぶっきらぼうに刻み込まれている。それを見た謙信は何故私の名前が書かれているのだろう、一体誰がこの墓の下で眠っているのだろうと考えた。
墓には一本の枯れた線香が置いてあり、それが独特な臭気を周囲に放ちながら、限られた寿命を細々と生きている。いや、寿命はすでに尽きているかもしれないが、少なくとも臭いが謙信を引き付けている間は生命を保っているように見えた。




