◆ラヴィニア
予約投稿日時間違えてた|゜Д゜)))…2時間遅れで修正修正。
私の兄は悲しい人です。
いえ、本当の間柄は叔父と姪ですが世間では候爵兄妹と思われております。
兄は前侯爵である祖父と父の最初の奥方との間の子なのです。
対して私は、父と後妻である母との長子です。
この事実を知る人間は少ないですが、兄が考えてる人数より多くの方々が存じております。
その筆頭は私でしょう。
そう、兄は私が自分たちの本当の間柄を知らないと思っていらっしゃる。
だから安易に毒殺になど手を出せるのです。
即死に至らない、けれど体内に備蓄していく毒性で病気に見せかけて殺したいのでしょう。
兄の毒物でよく寝込んでいた私は周りには病弱に見えた、それすら兄の甘さです。
実際のところ、私が毒物を摂取していたのは5歳まで。
今では兄が持ってきた毒物を食べたふりをした上で、寝込んでいると思わせているのです。
そうあれは私が5歳の時、
いつも仕事で忙しい父がわざわざメイドを下げて私に話してくれた真実。
それ以来私は兄を一切信じておりません。
さて、なぜ兄がそこまで私を殺したいのか?
それはとても簡単な事なのです。
なぜなら我が候爵家の跡継ぎは私なのだからです。
すでに候爵位は父に継がれている以上、”弟”である兄は分家筋となり、”娘”である私が本家筋となります。
祖父はどうやら兄に候爵位を継がせたいらしく、孫扱いしておりますがそんな事父が許しません。
幸いなことに、祖父は父が裏切るはずがないと思っています。
何しろ父は未だ祖父に逆らったことがない出来た息子だからです、表向きは。
その裏で兄を自分の子であると認知せず、その事実を王に”自分の子供の成人”まで公開しないという約束を取り付けています。
父の、自分の妻を寝取った男と息子…そしてかつて妻に対する復讐。
何年にも渡り、復讐の機会を伺っているなんて、若い頃から戦場で功績を上げ、好き勝手生きてこれた祖父には理解できないのでしょうね。
これが私が5歳の時に聞かされた真実。
そして今私はもう一つの真実を父から聞かさました。
我が国の第二王子殿下は王の御子息ではない。
はっきり申し上げてとても腑に落ちました。
兄がなぜああまでも第二王子に肩入れするのか…単なる同類哀れみだったと。
逆に父は第三王子に肩入れするのか。
我が家は表向きは第二王子の派閥と言われておりますが、
実のところ父は第三王子派閥、兄は第二王子派閥…私は第一王子の派閥に属しております。
熱心に派閥を唱えてるのは兄で、
父は第三王子の派閥ですが、それは第三王子が父の甥に当たるからこその後見としてです。
元々、父の妹で第三王妃である叔母は若い頃から第一王妃の取り巻きで、
第三王妃として王宮入りも王宮で第一王妃を支えるためのものです。
よって父は、王には第一王子がなるべきと考えております。
兄が跡継ぎであると思われているのも、誤解の原因でしょうね。
順当に行けば、第一王子が王位につき、
我が家も私が候爵家をつぎ、第三王子と結婚。第一王子の派閥となるのが真実です。
私の敬愛する上司ですら誤解なさっていたのは痛恨の痛手ではありますが、
全ては次なる王位継承を憂いなく終わらせるため、王自ら我が家に与えられた役割なのです。
今年、私は成人を迎えます。
恐らく私の誕生月である年の終わりには第三王子との婚約発表。
それに伴い私が跡継ぎであることの公表、兄の真実が明るみに出るでしょう。
兄は悲しい人です。
けれど私は兄が大嫌いですので、心は一切痛みません。
父にとって20年以上、私に取って18年に渡る復讐の幕がもうすぐ降りるのです。
まさか、兄を絶望に落とすのに先を越されるとは…。
私もまだまだだったようです。
やはり私の敬愛する上司…黒騎士様は最強です。