表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

ハルディリート伯爵


「はい?」

今しがた父上が仰った言葉の意味が分かりません、ええ本気で。

「いや、だからお前は結婚するつもりだったのか?」

「えー…私に結婚するつもりがなくても、結婚は貴族の義務では?」

最近は庶民に裕福層なるものができたせいか、恋愛結婚なるものを夢みる令嬢は多い。

だが、それはあくまで家の利益となる範囲の相手から。

それこそ裕福層の商人などなら平民でも、お金という利益がある。

逆に没落しそうな家でも貴族なら血を繋ぐ(新しい繋がりと純潔両方の意味で)という事になる。

ディーの言葉ではないが、

我が家は伯爵家なので、子爵、男爵あたりなら喜んで無害な夫を寄越すだろう。


ちなみに私には兄と妹が一人ずついる。

それなら伯爵家は兄が継ぐから私に婿は来ないのでは?と思われるが私は殿下に仕えている。

王城でも、直接王族に仕えるには爵位が必須。

なので実は私はハルディリート伯爵令嬢であると同時に、子爵でもある。

未婚なので、名乗る際は

クレメンタイン・アレクシス・ハルディリート伯爵令嬢ですが。


一応1代限りの爵位であるが、王族直属で受ける子爵位は下手すれば伯爵位より強い。

何が強いって主に”コネ”が(笑)

実際いくら実力があっても上の目に止まらなければ意味がない以上、コネは重要だ。

コネがあっても実力がなければ意味がないが、コネがないと実力も示せない。

…殿下と同年の伯爵以上の子供が少なくてよかった。


「一般的にはな、しかしこの場合…殿下がお前を手放すか?」

「その殿下と同僚に結婚の心配されたんですが…。」

「「…。」」

私と同じ地味な色彩な父がキョトンとして首を傾げる。

暗い緑の目と焦げ茶色の髪でそういう仕草をされると、どことなく小動物…リスを思わせる。

「そもそも15歳のデビュタントに戻るよう手紙を出したんだが…。」

「修羅場すぎて帰れませんでした。」

二重の意味で、ええ王宮は血の雨でしたよ!

「王族直属がそんな簡単に仕事を辞めれるのか?」

「え?辞めませんよ?」

何をおっしゃる父上、私は一生殿下に仕えますよ?子孫3代余裕ですよ?

「…年単位で家に帰れないのに結婚するのか…?」

「それでもいいという人と結婚すればいいかと。」

あ、父上が物凄い深いため息を吐いた。

あとなんで机に突っ伏すんですが、その状態だと上目遣いでますますリスですよ!

「わかった…一応探してみる」


と、ここまでが2年前の話です。

あれから父上以上に母上が燃えて淑女教育?なるものに従事するはめに…。

ええ、父上が殿下直談判して3年の猶予を頂いたんです。

先に述べたように殿下にとって命の恐怖そのものだった第二王妃は故人。

次なる反対勢力が勢いづく前にさっさと婚姻を纏めろと。

そんなわけで2年で付け焼刃の淑女教育受けて紹介された婚約者候補。


黒獅子騎士団副団長アイザック・レオン・アリエル候爵令息


父上…なんで候爵家?それも跡取り?

それも黒獅子って白鷲と並ぶ二大騎士団…王直属の精鋭部隊しか上にいないじゃん!

極めつけにアリエル候爵!?よりにもよってあの第二王妃の息子の第二王子派閥かよ!!


「父上!!」

「落ち着け、分かってるから。」

「これが落ち着けますか!第二王子派閥ですよ!思いっきり殿下の敵じゃないですか!」

「それは第二王妃が存命だっただからだろう?」

「それがなんです!」

「つまり、相手も第二王妃の死で派閥が瓦解しかけているんだ。」

「いい気味です。」

「…殿下関係は本当に容赦ないな。

まあ、いい。つまりあちら側も第一王子に鞍替えしたいというわけだ。」

「…信用できるんですか?」

「さてな、しかし信用できる人間だけでは国は回らないだろう?

お前が休みも取れないのも第一王子の派閥の人間があまりにも少ないからだ。

質は劣っても敵を味方に近い状態にしておく必要があるだろう?」

「…父上って。」

「ん?」

「人畜無害な容姿でディー並に腹黒ですね。」

「ありがとう。」

腹の黒さを一欠片も感じさせない笑顔に、今は遠い殿下の微笑みが恋しくなりました。


拝啓、親愛なる戦友、ディートハルト・ディザイア候爵

我が父上はどうやらあなた並みの腹黒だったようです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ