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まだ行き遅れじゃありません!

突然だが、私は行き遅れ気味である。

あくまで気味で、完全な行き遅れでないところがポイント。


別段、おかしな噂のある令嬢というわけでもない。

家も可もなく不可もない伯爵家で、家族自体も至って平凡な貴族といえる。

ちなみに私自身も、令嬢としては平凡…いや、少しばかり劣っているかもしれないが、それも全体的に見れば中の下くらい?

ダンスは得意だが、刺繍の類は苦手なんだ…。


そんな私だが、第一王子と同年であるため幼少期の”お友達”の一人として選ばれた。

選ばれた当時はお友達は10名ほどいたが、現在でもお友達なのはわずか3名である。

そしてそのお友達であることこそが行き遅れ気味の大半の理由である。


一言で言うなら、仕事をがんばりすぎた!!


本来15歳で社交デビューのはずが、現在私は18歳!

私の仕事…まあ、殿下のお世話係のようなものなんですが…休みがないんです。


いや普通は休みあるんですけどね?

ちょっと殿下命狙われすぎて、そばから離れられませんでした(笑)

…笑うとこじゃないのは分かってますが、もう笑うしかない状況なんですよ!


本当に第二王妃がまだ生きてたら私確実に行き遅れでしたね…。

あ、ちなみに陛下には第四王妃までいましたが、現在は第一王妃と第四王妃しかおりません。

第三王妃は確か自殺?あんまり知らないので詳しくは知りません。

問題の第二王妃は黒騎士の粛清ですね。

ん?ああ、黒騎士ってのはうちの国独自の制度で、王または王太子のみが持てる特別の騎士。

王族と同じだけの権限とか、敵と判断したら問答無用の粛清なんでもありの騎士。

まあ、基準がかなりきついらしいんですけど。

その割に陛下も殿下も黒騎士持ちですよね…確かその前は10代遡るらしいけど。


第二王妃は隣国を挟んだ大国で、長年うちの国狙ってるとこの元王女様。

今は王妹ってやつかな…妹なんて可愛げのある生き物じゃなかったけど(笑)


それで、第二王妃は長年第一王妃の息子である殿下の命を狙ってて、その咎で粛清。

3日に一度刺客送って、毎日毒物送る生き物が10年以上も王妃してたなんて意味不明でしたが。

まあ、そこは例の国との力関係?外交?とかいう難しいものがあったそうです。


私は少々人間関係とかそういうの疎いんで、外交とかパスです。

その代わり書類は早いそうです、速読とか、文字を書く速さとか、計算とか!計算とか!

…これだけ暗算できて、なんで人間関係の計算できないの?

とか、やつが笑顔でいいやがるが無視です!無視!

というかなんで私がやつの書類手伝わないといけないんですか!また休みが遠のく!

しかしやつ…未来の宰相(色々な意味でほぼ確定)も休みないから文句が言いづらい!


て、大幅に話が逸れましたがつまりそういう諸々で行き遅れ気味!

って最近気づいたんです(笑)


だって、私が殿下に仕えだしたの7歳ですよ!

しかも毎日殿下の命の危険を感じる、恐ろしい職場ですよ!?

月日なんてあっという間に過ぎました!

しかも私以外のメンツが全員男…おのれ!なんで男の方が結婚適齢期遅いんだ!


気づいた原因もやつでした…。

あれは2年前の春、廊下の隅でやつがメイドに告られたのを皆で目撃したんです!

それで戻ってきたところをひやかしたら…。


「何がそんなに楽しいんです。私とてそろそろ結婚してもおかしくない年ですよ?

いや、それよりクレムはいつ結婚するんですか?」

不機嫌そうな表情から心底不思議そう表情に、

表情筋動かないって噂は都市伝説だなと確信しながら言われた言葉を咀嚼して…。

「え?結婚誰が?」

寝耳に水、一瞬結婚って何だったか悩んだのは秘密。

「誰がって…仮にもあなた女性なんですが、真っ先に結婚するでしょう。

ハルディリート伯爵の事ですから無害な婚約者でも用意なさってるんでしょう?」

「クレムの旦那か…かなりご愁傷様じゃないか?」

「二人共言いすぎだ。特にディーは無害を強調して話すな。

ドムも、クレムだって女性なんだ旦那まで投げるわけないだろう。」

ディーとドムの私に対する侮辱を庇って頂いた殿下には悪いが、

私はきっと喧嘩になったら殿下以外は投げるよ、うん。

それにしても婚約者…あれ、そもそも父上と最後に会ったのいつだろう?

「クレム、どうした?」

殿下が心配そうにこちらを覗き込む。

普段は凍るような視線で周りを見ているはずの蒼が今はとても暖かい色をしている。

見とれて返事も忘れている私に慣れているのか、

殿下は少しだけ苦笑をして、私の頭を撫でてくれる。

幸せで悲しくて、そして愛おしい。

こうして殿下の限られた人間にだけ見せる優しさ触れるたびに思う。

私はきっと殿下のために生きて、殿下のために死ぬ。


ディーもドムも同じ。

私たちはあの日殿下の夜の髪が、白石の肌が赤く染まったのを見てしまった。

あの瞬間の恐怖と絶望、唯一の希望は蒼の瞳が生きていた事。


ドムの言い分ではないが、私は旦那のために生きれない。

…本当に、ご愁傷様だよ。


「とりあえず父上に聞いてみますね、結婚しても私は私ですが。」

「クレム…ありがとう。」


拝啓、我が愛しの天使殿。

どうやらお姉さん急な帰省が決まりました、お土産何がいいですか?


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