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とある昼下がり、俺は草原の真っ只中で昼寝をするのが日課だった。そして、親友の女の子が一緒である
のんきな毎日だ
しかし、時よりこのところではない、遠い世界での話を夢に見る
今日もこうして…
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「お母さん、お母さん!」
「……は来ちゃダメ!早くハッチに行きなさい!!」
「お母さん、お母さーーーーーーん!!」
火の燃え上がる周り
何か得体の知れない怪物
炎に飲み込まれる母
ハッチに閉じ込められた少年
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終わった跡地は、灰でいっぱいだった
「…お母さん?」
「…お父さん?」
隣に少女がいた
だいたい少年と同じぐらいの子である
「お父さん、お父さん!お父さーーーーーん!!」
少女は呼ぶ、彼女の父を。
殺風景な世界で、返事などするわけがない
彼女は、電池が切れたように突然倒れた
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ここまでで今日は目が覚めた
毎日見るわけではない、時々だ
もう、夕暮れ時だった
「おい、起きなよ『カナミ』!」
「う〜ん、あとちょっとだけ…」
予想はできていたさ。なら…
「今日って、確か《ピザ》じゃなかったっけ?」
ガバッ
「さあ、帰りましょ〜」
本当にわかりやすい奴
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六年前、俺は草原の真っ只中で倒れていたところを、『カナミ』のオジに救われた
実際には、カナミ 自身も同じように、俺よりも二年前に拾われたらしく、俺と カナミ は
『草原の迷い子』
と呼ばれていたらしいが、実際は俺たち以外にいるわけではないらしい
俺がその時覚えてたのは『ハゼ ゲンキ』という名前だけだった
それは カナミ も同じらしい
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ここ六年で、カナミ の食い意地の悪さなど、よく知った。まあ、オジさんのほうがよく知ってるのだろうが…
今日も カナミ は、シチューを食いまくる
無くなる前に俺もおかわりをするが、間に合わない
俺のシチューに手をつけようとしてきた。いや、食べたそうな眼差しで見る。
「って、お前散々食ったろ!やらねーよ!!」
「何よ、まだ何も」
「目が言っている。てか、言ってるそばから手のばすな!」
と、ペシンッ!と叩く
「痛いじゃないのさ!レディーに暴力なんて」
「お前はレディーじゃない」
グキッ!
す、スプーンが折れたァァァァァ!!
「私が、何ですって?」
こいつは、何故かキレたときに強い力を出す
「すいませんでした!あなたは世界一の美少女で、俺の女神です!!」
「あら、やだ〜…そんな急に言われても、それってプロポ……」
何とかキレを回避したらしい。
「あまり家の物を壊すんじゃねーよ」
奥でオジさんが哀れにスプーンを見る
「あ、あはははは…」
こういう時に限って カナミ は聞いていない。てか、なんかとんでもないとこまで行ってるような…
「こんなボロ屋敷で痴話喧嘩はせんでくれ」
「ち、痴話喧嘩なんて、またまた〜」
今度のは聞いていたらしいが、また独り言に戻って行った
「「はあ〜」」
当然、理由は違うため息だ
「結婚の日取り、どうしよ〜!!」
なんか凄い到着点に着いたな、おい!
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なあ、本当にやるのか?
ああ、勿論だ
でも、これって失敗すると結構つまらなくならせんか?
そのリスクも含めて、ギャンブル感覚でするのさ
まあ、ギャンブルは好きだけんど
まあいいではないか。また…
作り直せばいいのだから、あの時のように
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俺は今日もあの夢を見ることはなかった
しかし、前に見たことないものを見た
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真っ白い空間しかなかった
『『そこの少年よ』』
「!?」
振り向き、上下前後左右全て見回すが、誰一人いない
しかし、複数の声はした
『私どもは見えんよ』
『私たちは人でもないのだから』
なら、魔物か?
『そうではないさ』
どうやら、心の声まで聞くらしい
『まあいいではないか、細かいことは』
『時に少年よ、《伝説の勇者》にならないか?』
伝説の勇者?詐欺か何かか??
『詐欺でもなんでもないさね、ただ世界を救わないか、という事だ』
面倒だな
『無論、それなりの対価をやるぞ。地位・名生・権力・女・征服・不老不死、どれでも好きなだけだ』
『悪うない話じゃと思うが』
まあ、お手伝いさん、みたいなことかな
『まあ、それで合っておろう』
『どうだね、やる気はないか?』
一つ聞いていいかな
『なんじゃね?』
『申してみよ』
それで平和になるのか?
どうしても、争いを好んでるような口調だったので、聞かなければならない。
あの夢みたいにはしたくないからこそ
『『……………………』』
やはりそうなのだろう
じゃあ、約束してくれ
『……なんだね』
俺を……………………
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『……約束は守ろう』
忘れんなよ
『…もちろんだとも。しかし、より苦痛にはなるまいか?』
あんたら神と仏が言うか!?
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パチッ
目は覚めた
夢、だったのだろうか?
「…いや、夢じゃないな」
と、俺の横にー
《光の剣》が横たえてあったから