第五話 未来の自分と街
夏輝は臨に聞き返す。
「あぁ。未来のお前は、困っている人を助ける、“ヘル”という仕事をしているんだ。」
「よくわからないけど、そうなのか。」
「もうすぐ外に出るぞ。」
臨が夏輝にそう伝えるが、どこを見渡しても出口らしき扉は見当たらない。
「な、なぁ。出口無くねぇ?どこから出るんだよ?」
夏輝が混乱した頭を抱えていると、臨が微笑んだ。
「ふっ、ここは20年後の世界だぞ?」
臨はそう言うと、目の前にあった壁に触れる。
『ピピッ、指紋認証中。…………完了致しました。』
急に壁がしゃべりだしたかと思うと、何もなかった壁に扉が現れた。
「す、すげー。」
感心している夏輝に対し臨は、
「侵入者を逃がさないために、あえてドアを隠しているんだ。」
と言いながら外へ足を踏み入れる。
「おい、待てよ。……!な、なんだよこれ!」
外に出た瞬間、夏輝の目に飛び込んできたのは、廃墟と化した街だった。
「…ど、どうなってるんだよ。未来ってこんな感じなのか…?もっと技術が進んでるんじゃないのかよ。」
動揺を隠せない夏輝は、必死で臨に問いかける。
「…いや、確かに技術は進んでいた。」
「じゃあ、なんで!…なんでこんな…!!」
臨は哀れみの視線を夏輝に向けながらも、はっきりとした口調で告げた。
「ある日、街に突如現れたあるものによって街はこのような状態になってしまったんだ。そして、人々はそいつらの行為に頭を悩ませる日々を送ってるんだ。」
「…あるものって…?」
「“ダークサス”という、モンスターだ。」




