第三話 臨
夏輝は、馬鹿げてるよな、と言ってベットに腰かけた…その瞬間。
「!!!?…なんだ?」
部屋には誰もいないはずなのに、姿見の向こう側に人影が写ったのだ。
「いや、まさかそんなはずはないよな…。」
夏輝は、周囲を警戒しながら見回す。
そして、誰もいないことを確認すると、
「なんだったんだ?俺の見間違いか?」
と言って、もう一度姿見に目をやる。
すると、次ははっきりと姿見の中に人影を見た。
「マ、マジかよ…。なんなんだよこの鏡っ!」
夏輝は、恐る恐る姿見に顔を近づける。
「………は、…たし………き……のゆ……………し…ち……すけ…。」
微かだが、姿見の中から声が聞こえる。
「!?鏡の中から声!?どうなってるだ!?…わっ!」
姿見に触れようとした夏輝の手が、姿見の中に消えていくように吸い込まれてゆく。
「は……き…。」
「どどどどうなってんだ!?しかもまた鏡から声が…!?」
夏輝はまた部屋をキョロキョロと見回し、また姿見へと視線を、戻す。
「…よし…!」
そう呟くと、夏輝は腹を決め、姿見の中へと足を踏み入れた。
「………ん?どこだ、ここ…。」
目を開けると、そこには天井があった。
夏輝は、上半身を起こすと辺りを見回す。周りは鉄の壁で囲まれており、見る限り研究所のようだった。その部屋にひとつだけあるベットに、夏輝は寝かされていた。
「確か俺は、鏡に吸い込まれて…。」
考え込んでいると、周りの壁が動き、向こうから一人の女性が入ってきた。
「お目覚めか?」
その女性はそう夏輝に問いかけた。
「誰だよ、お前。というか、ここはどこなんだ?」
「私は、臨。ここは20年後の世界だ。」




