第十話 覚悟
夏輝は臨が教えてくれた通り、三階のA室に入り、ベットの上で体を休めていた。
「……未来…か…。」
ここが未来の世界ということを信じきれていない自分に腹が立ってくる。
「くそっ……!」
夏輝は思いっきりベットに身を投げた。
(…あの臨ってやつ、泣きそうな顔してたな…。俺が遺跡に入って、世界の破滅を阻止することができたなら、未来の俺も、臨も、みんな救えるのかな…。)
夏輝はそう思考を巡らせながら寝返りをうつ。
(ん?…ちょっと待てよ。俺は普通の高校生だぞ。あんなモンスターがうじゃうじゃいるとこに入って闘えるわけ……。)
そして大きなため息をはいた。
(闘えねぇよ…!!…なんで俺なんだよ…。わかんない、もう全然わかんねー…。)
夏輝は立ち上がり、部屋の扉の前に行く。
(…だけど、ここで逃げたら何も救えない…。また臨が悲しそうな顔をするかもしれない。…勇者じゃなくったって、守りたいもの救いたいものがあれば強くなれるかな…。)
ドアノブに手をかけたまま、夏輝は動きをとめる。
(…こんなふざけた未来を変える力を俺が持っているなら、変えたい…!この世界を。)
握り締めた拳は小刻みに震えていた。
(あぁ、でも。やっぱり怖いって、嫌だって思っちゃうな。死んじまうことだってあるかもしれないのに…。)
そう考えると、心臓がバクバクと音を立てて高鳴って、今にも張り裂けてしまいそうだった。
(…そんなこと考えてたら、元も子もないか…。…俺ってこんな弱気だったっけ?恐くて恐くてたまらない。)
夏輝はドアノブにかけていた手をおろし、またベットにフラフラと倒れ込んだ。
(…だけど。今あきらめたら、きっと俺は過去でも未来でも後悔するから。…それだけは絶対に嫌だから。)
夏輝は上半身を起こし、震える体を強く握り締めた。
(……覚悟をきめよう。)




