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水
ついにやってきた。
ああ、さようなら、さようなら。
きっともう会えないね。
二人で海に浮かんでいた。透き通る青に沈むことはない。空はグレイ、俺は黒、君は白。
「最初から、こうするしかなかったんだと思うよ」
「そうね、最後にこうしたかった」
「きっと俺たちは、最初から決まってたんだ」
「あら、最後にやっと決めたのよ」
指を絡めて固く握る。君の爪が食い込んで痛かった。君も、男の握力で痛いのかなと思う。
「最初にきいた質問の答えを言ってくれるかな」
「ふふ、最後にぴったりね」
お願い、お願い。俺を必要だと言って。それだけでなんだってできる。それが生きる糧になる。
「水が、欲しいわね」
君の欲する水で死ぬと思うと怖くなった。
■青い海のふたり
すべて、ここから始まった。
すべて、ここで終わった。
ああ、君と二人で溺死したい。
水でもいい。
できるなら、愛されたかった。
ありがとうございました。