キアラン 8
以外にも凛として、でもかわいらしい、透き通るような声でそう呟いた。
俺は、フィオナのローブをどける。そこからのぞいたのは、黄緑色の綺麗な瞳だった。整った顔立ちに、少し幼さが入っている。
「…………」
綺麗だなぁ……。
「あの…」
ぽうっとして見ていたのにどう対処したらよいのか分からないようで、おどおどしている。それに、たぶん気づいているのだろう。俺が天使と対立する悪魔だということに。
単刀直入といっても良いほどだが、
「なあ、フィオナちゃん。どうして泣いてたの?」
などと聞く。
彼女を傷つけないように、なるべく明るく言ったつもりなのだが、彼女の瞳からは、一筋の滴が流れ落ちた。
「!」
ぎょっとして、俺はフィオナを見つめる。それで、おどおどするのはこちらの番だった。
「私……、お父様が、仕事の人と、けんかするのを見ちゃって………。怒ってるときのお父様は、眉を吊り上げていてとっても怖いし……。そんなんだから、お父様は嫌われちゃって。誰も争ったり、ケンカしてる所なんか見たくない―――」
フィオナは、泣きながらそう語った。
――…俺じゃ考えられないことだな……。それにしても、そんなことでそこまで泣かなくても……。
今もなお、彼女は泣きじゃくっている。
「…………」
どう対応していいのかも分からず、彼女が泣き止むのを静かに待っている事にした。だが、遠くから見ていたハンナが、突然俺の真横に現れたのだ。
「あんったねぇ!そんなことでぐじぐじしないの!折角のかわいい顔が台無しじゃない!」
フィオナは突然現れたハンナを見て目を見開いていた。それでいて、泣くのは一旦やめた。それは、驚いているせいでもあるのだが。
ああ……。面倒くさいな。そういえばハンナってこういうの嫌いだっけ。
フィオナは、俺が出てきたときと同じように怯える。それを見て、あわてて説明をする。
「えっと、こいつはハンナって言うんだ。家も近くて、小さい頃からいたから幼馴染っていうやつだな。まあ、俺から言わせたら腐れ縁だけど。」
「何ですって!聞き捨てなら無いわねっ!」
それから、ハンナと言い合っているうちにフィオナも見ていて、自分に危害を与えるつもりは無いのだということを悟ったようだ。
「くすっ」