キアラン 29
小規模で納まった戦いから幕を閉じてから五年。その戦いは、ほとんどの者には伝わらなかった。
フィオナはキアランと出会った時と同じようにまた扉間で泣いていた。
フィオナは親身共に成長はしていたが、まだ涙もろいようだ。
「おーいっ。何をそんなところで泣いているのかな?」
泣いているフィオナに、優しく背後から声を掛けてくる人物がいた。
「えっ……?」
フィオナは懐かしく温かい声に、背後を振り向いた。
そこには、五年間の間に逞しくなったキアランがいた。
「久しぶりっ」
キアランとフィオナが再開したのは、偶然である。だが、必然でもある。
フィオナは思わずキアランに抱きついた。
「キアランっ!」
「おわっ!とと……」
フィオナはキアランの胸に顔をうずめる。
「ずっと、この時を待ってた!」
フィオナはそう言ってから、顔をほんのりと紅く染めた。そして、少しためらったように言った。
「今なら言える。キアラン、私は――――」
扉間で吹くことの無いそよ風が吹いた。
キアランはフィオナの言葉を聞いて、顔を真っ赤に染める。恥ずかしそうに頬をかいた。
キアランの黒髪とフィオナの金髪がそよ風で揺らぎ、絡まりあう。
まだ、キアランもフィオナも知らなかった。二人の出会いが、世界を左右させるほどのことだなんて――――
このお話は34×42の30枚に収まるぐらいの短編のものでした。
私が書き始めて2番目のお話であります。お恥ずかしい事に、1番始めに書かせていただいたお話は、完結しないままタンスの中へと入っております。
……それはさておき、今回のお話はファンタジーでしたが、次のお話は如何なのでしょうか!?
アドバイス、感想等、出来る限りしていただけるとありがたいです。
では、今後ともによろしくお願いします。