キアラン 25
扉間に戻った。
真っ先に感じたのは全身に感じる痛みと熱さだった。今までの間に沢山の傷を負ったのだろう。だが、扉間に意識が戻ったときからは新たな痛みは感じられない。
その理由は一瞬にして分かる。それは、俺の周りには天使の軍がいたはずだが、その者たちは倒れていた。中には立ち上がろうとする者はいたが立つ事は出来無い。
俺の向いている方向の少し先には、フィオナの父がいた。
俺の出ている力の性か、左腕を抑えている。その左腕の辺りの服は血でにじんでいた。
サタンの力を制御できていないためか、何故かフィオナの父を攻撃しようとしていた。
フィオナの父を傷つけたら悲しむのはだれか……?そんなもん、フィオナに決まってんだろ。俺はフィオナの悲しそうにする顔を思い出す。
いやだ。俺はフィオナをこの手で傷つけたくない―――!
「やめろぉおぉぉお!」
俺は叫び、その場にしゃがみこんだ。
すると、脳裏でまた、男の声がした。
『そうか。お前はあの男を傷つけたくは無いのだな』
その男からは微笑がもれた。
男は言う事を聞いたらしく、力は収まった。だが、俺は全身が重く感じその場に倒れこむ。
ああ……これで、終わったのか……?
そう思った直後、俺の意識は途絶えた。