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キアラン 24
俺の中であきらめかけたそのとき、脳裏で男の低い声がした。
『お前は、何か護りたい物はあるか?』
―――え?
いつの間にか、視界には漆黒の闇しかなかった。その空間には一人の男らしき人物がいた。
その人物の顔は闇に隠れ見えない。
『お前に何か護りたいものがあれば私は喜んで力を貸そう……!お前の護りたいものはなんだ?』
男は俺にもう一度問う。
俺は名前も知らない男に大声で言った。
「そうだ……!俺には護りたい物がある」
『それはなんだ?答えてみろ』
「それは、俺のせいで危ない状態になっている地界。家族とハンナ。それに―――フィオナを。俺は護らなくちゃならねえ!力を貸してはくれないか!」
男の口元が闇が少し和らぎ、微かに緩む。
『いいだろう。それだけで十分だ。私はお前に手を貸してやろう――!』
男は俺に近づき、手を差し出す。
俺はこの男の手をとってもいいものかどうかと不安になった。だが、それでも大切な物を護るためなら、俺は手をとった。