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キアラン 2
「ふうっ……。これで大丈夫だろ」
とてつもなく速いスピードで、館から一キロほど離れた小さな森辺りに移動した。そして、宙にいるまま立ち止まる。
後ろを振り返ると館は小さく見えていた。
きょろきょろと辺りを見渡すが、俺を捕まえるために追ってくる者はいないようだ。人影すらない。
「さてと、そんじゃあまあ行くとするか!結構時間くったけど、余裕が無いわけじゃないし…」
俺は、左腕に巻きついている腕時計を見る。
待ち合わせの時間は、十時半。
そして、今は十時二十五分だ。
「げっ……!」
扉間という場所が待ち合わせ場所になっている。その扉間に行くには、速くて十分は掛かるのだ。
「速くいかねえと、怒られる!」
大きくて黒い翼をすばやく羽ばたかせながら、扉間という場所に移動して行った。