キアラン 14
ポタポタッ。
写真たてに滴が零れ落ちる。
私はあわてて手で涙をぬぐった。
今、私は泣くつもりは無かったのだ。だが、自然と涙が零れ落ちてしまう。
そうだ……。こういう気持ちのときは、あそこに行こう……!
私は、涙をぬぐい部屋から出て行った。
私の家が所有する敷地の中の庭へ移動した。
真紅の赤いバラ、色とりどりのチューリップ。たくさんの花々たちが集まって、楽しく会話をするのだ。天使は自然の声を聞くことができる。そのため、母が亡くなってからも庭に行って会話をするのだ。それが日課である。
ここはいつでも母の面影がある。母が大切に育てた植物。母が受かっていた道具。母がここにいてもおかしくないぐらいだ。
唯一父が面影のあるものを見えるところにおいているのがこの庭だ。自分ではしていないが、使用人に母の大切にしていた庭の手入れをさせている。目に付く物だからだろうか。父は母の大切にしていた庭はしっかりと手入れをしている。
屋敷の廊下から見えるところにその庭はあり廊下を通ると父がどこかその庭を寂しそうに、でも懐かしさが混じったような顔で眺めていたのを見たことがある。それは、なぜだかは分からない。父と母で何か大切な思い出でもあるのではないかと思った。
私は庭に座り込んだ。近くにあった花を静かに見つめる。
ぽうっとしていると、私の左肩に黄色い小さなかわいらしい鳥が止まった。その鳥は心配そうに見つめて語りかけてくる。
『どうしたの?今日は元気が無いね……』
「そう……?」
『ええ。…………そういえば、いつもこの日は元気が無いのね』
この鳥は三年前にこの屋敷に住み着き始めたとりで、母のことは知らない。
「なんでもないわ。大丈夫大丈夫。あのね、今日は新しいお友達ができたの!」
鳥には余計な心配を掛けたくないので、母のことは言わない。それで、わざと明るい話にしようとする。
『へぇ…!どんな子のなの?』
えっとね……二人いるんだ。一人はハンナちゃんって言って、ちょっときついけど、根はいい子だと思うの!
私はいつもの笑顔になって言った。それを見て安心したようで、鳥のほうも顔が明るくなる。
『もう一人は?』
「もう一人は…………キアランっていう、男の子なの……。黒い長い髪に、右目が赤色で左目が黄色なの。」
『…………ねぇ…。その人……もしかして、悪魔なんじゃない?』