第四十三話 『意思』
……笑顔がよみがえる。
最初に会った時。そういえばアイツ、盗賊まがいの事してたんだよな。
それで何も持ってないこと気付いて笑っちゃったっけ……。
それで、何だかんだ言いながら、あっさりと、でも深い絆を作った。
兄と妹。俺も結局、近くにいる人が居ないと駄目なのかな……。
遺跡に入って、魔物に追いかけられながらも、
それだって良い思い出だ。
それで、アイツと戦って、アリアを守って。
あ、ヤバ。
何かまた涙でてきそう……。
「何だよな、アイ兄。何ていうか、女々しいよ?」
「アリア……」
「私はさ、元気なアイ兄が好きなんだよ。だから、だから絶対に生きてくれよな!」
幻。
今のは、夢かもしれない。
一瞬だけ見えた、アリアの姿と言葉。
夢か現か幻か。
それともただの妄想? 亡き女を想うとは良く言ったものだよな。
「ああ、絶対に、これからも生きなくちゃ、な」
「『跳躍者』……??」
「『救世主』。もう、大丈夫だ。
コイツへの、この憎しみは消えないけど……それでも、俺は生きてくよ。
もう、自分のために無茶なんてしないさ」
アリアの残したほんの一欠けらの魔力。
……もう、迷わない。
「『悪魔の王』。お前は殺す。だけど、俺は死なない」
「…………く、は! ははは!!! 面白い!!
これだから『跳躍者』は面白い。たった一つの魔力残滓でそこまで変わるか!!
はははははは実に面白い!!
……おっと、そろそろ時間だ。
一言言わせてもらう。
…………敵は、いるものではなく、自分自身で作るものだと知れ」
「あ!? 何だ? どういう意味だよ!!」
傍から聞いても意味深な雰囲気のする言葉を残し、目を閉じる『悪魔の王』。
……作られるもの?
訳が分からない。
「言っただろう? もう時が来た。……お前のことだから、どうせ不殺でも貫くかもしれんが。
忠告しておく。
『意思』は、すぐそこに、居る」
そして、『悪魔の王』が体の抵抗を抜くようにした瞬間――――
ドゥッ!!!
と、鈍い着弾音と共に鮮血が舞い、
俺が抑えていた『悪魔の王』の体は、既に心臓の穴を中心として、灰と化していた。
「ッ――――!!!? 『救世主』!?」
「私ではありません! それどころか、コレは、この光の色は!!!!!」
『救世主』が焦っている。知っている敵か?
だとしたら、アイツが焦るほど厄介な存在だということだ。
「黒い、光?」
その時、視界に入った光。見覚えがありすぎる、光。
そう。魔力が視覚に見えているアレだ。
だが、黒は少なくとも近くの知り合いには居なかった。
ということは、こちら側に介入できるほどの魔法使い?
「……誰か、知ってるのか?」
問いただすと、『救世主』は顔を曇らす。
待て、『悪魔の王』が言っていた言葉。最後に言っていた……。
『『意思』は、すぐそこにいる』
ッッ!! まさか!! 『意思』って!!!
声が、聞こえた。聞き覚えのある声。
いつの間にか、黒い光は目の前まで迫っていた。
「……残念だ。折角新しい玩具を選んだのだが。
簡単に二つも壊れてしまった。……だけど最後の二個は、頑丈そうだ……」
黒い光の中には、あの人が立っていた。
違うところといえば、俺が知っている姿は中年のおじさんのようなものだったのが、
今は若返ったかのように、青年の姿をしているところだ。
「……やあ、久しぶり、『救世主』。
そして始めまして。私は、『意思』と言うよ」
その顔は、面影を残しているし、
何より、感じた。
「……マスター」




