第三十九話 王の目的
「……無理しやがって」
あ? 今の俺は俺だ。分かるだろ?
でも『俺』の奴、無理してるな。
分かるだろう。言っただろ? この体は、魔術を使うのには脆すぎる。
「俺の体じゃねえから痛みなんて無いが……どうみても危ないだろ」
魔術の為の魔力を両手に溜め、そして人間に無茶な術式を使った反動。
掌・手の甲のところどころが切り傷みたいになって、血が出てる。
俺が無理やり動かす分には問題無いが、肩も外れかかってるっぽいし。
「これでアイツ死んで無かったらキレるわマジで」
そんなコトをつぶやいているうちに、影は。
姿を消していた。
粉々にされ、ほとんどの影がカウンターで飛んできた。
そしてそれらを全部消滅させたのだから、当たり前と言えばそうなのだが。
「ま、主賓は『悪魔の王』だし。
こんな弱すぎの噛ませ犬役も、ここで終わりだろ」
と、
「……解けちまったか」
左手は段々と形を崩して行き、そして黒い紋様が晴れた場所には、何も無かった。
「元々肉が無い場所に腕を作るのが難しいってのになぁ」
これもだが、『俺』の体には負担がかかる。
しかしこれも一応は、『俺』の提案した作戦の内。火力を増やすだけに、負担も増えるんだがな。
『だから、負担なんか考えなくて良いよ。俺が望んだことだ』
「そうは言ってもなぁ。……『救世主』はどうなった?」
再び、改めて回りを見渡すが……いた。
未だに戦況はどちらにも傾いていないように見えた。
多分、同等の能力というのはそのままの意味らしかった。どちらも攻撃は拮抗するのだ。
「加勢してやるよ『救世主』!!!!」
「! 無事でしたか!」
「なるほど。我が思うより『跳躍者』は犠牲知らずだったらしい。
影を倒してよくここまでたどり着いた、と賛辞を送らせてもらう!
『救世主』。貴様は、知っているだろう? 『四人』の結末を」
いきなり、まるで童話を読む子供のようになる『悪魔の王』。
何だ? 挑発させるための罠? それとも気を逸らせるため?
『救世主』は、ゆっくりと口を開く。
「……『四人』は呪われた者達です。結局は殺し合いとなる運命。
だが、その最後に残った時、…………まさかッ!!??」
その救世主の言葉を聞いた瞬間、またしても再び笑う『悪魔の王』。
どういうことだ?
「その通り。察しが良いな『救世主』。
そうだよ。我の目的でも教えようか『跳躍者』?」
「目的……??」
「そうだ! 王である我の、崇高なる目的。それは、
『意思』となるコトだ」