第三十六話 アイ・半悪魔化
「うおおおああああ!!!」
風に乗ってカマイタチを連射。
黒い光に飲み込まれていく。
「なるほど。『天使の末裔』に治してもらいましたか。
ですが、その左手は……??」
「これは後でどうにかする! 今はアイツを休ませるだけだ」
「後で、か。それは我から逃げ切れると思ってからの言葉か?」
「はっ! 逃げ切るんじゃねーよ! お前を倒してやるんだよ!」
体の芯が熱くなってくる。両足から漏れる黒いモノ。
液体みたいで何かわからないそれは、ところどころに複雑な紋様を描きながら、上にせりあがる。
気分が高揚する。今なら何でもできそうな考えになる。
そしてそのまま、思考内で、先ほど『俺』と話しあった通りにした。
これは、悪魔の『俺』ととって代わるわけではない。
だが、人間のままでいるわけでもない。
言うならば、これは半悪魔化。思考内の主を俺としたまま、体を悪魔にすり替える。といっても、それも一部だが。
「だけどこれで、お前と決着をつける準備はできた!!」
両足の一部に黒い線が入り。
そして右手の機械の部分にも多少その『線』が入っている。その線を中心とし、体がどんどん熱くなってくる。
『行くぞ! しばらくは俺がもたせる! 速攻で決めねえとマズいぞ!!』
分かってるさ。これは体が俺のまま悪魔にするもの。
その実、俺自身の体の負担が半端無い。こんなことを長く続けてたら、体がもたない。
俺は、自分は死んでも良いから、他人を助けるとか、そういうのが嫌だ。
絶対に俺は死にたくないし、他人だって死んで欲しくない。
なら、
「どっちも助けて敵を倒してハッピーエンドってなぁ!!!」
悪魔の強化された脚力、予想以上だった。
一瞬で『悪魔の王』に詰め寄り、カマイタチを振るう。
風斬り音と共に、少し灰色みを帯びた黒い刃が王に当たる。
「よし、これなら「倒せるとでも思ったか!!」!!!」
右側から衝撃。
咄嗟に右手でその正体を弾くが、反動で後ろに体が持ってかれる。
「我が一介の半悪魔に殺されるとでも思ったか!」
『悪魔の王』は右手を突き出し、漆黒の奔流を流れ出す。
それを左に跳躍して避ける。
そして着地と同時に圧縮弾とカマイタチを発する。
どうやら悪魔の力が付与され、能力で操った風にも魔力があるようで、当たったらそれなりにダメージがあるらしい。
王は受け止めようとせず、それらを避ける。
「……こんなんじゃ駄目だ。魔術相手に能力は、相性が悪い。
なあ『俺』。魔術は使えるのか?」
『あ、ああ一応。だけどよ、そしたら『俺』がどうなるか保証できねえ。
俺は悪魔だし大丈夫だが、お前はまだ人間だ。それでも…………良いのか?」
「……勿論!! 代償無くして大きな力は使えないってことぐらい、前から知ってるさ。
でもな、俺は死ぬつもりなんて無いからな。思考を完全にお前に譲る! 好きにやれ。俺にかまうな!!」
『そうかよ。ま、『俺』がそう言うなら良いけどよ。
本当に死ぬなよ。まだ『俺』とは戦い足りないんだ」
「分かってるって。思考と体を完全に譲るから、やれ!!」
瞬間、意識が空中を漂うような雰囲気になる。
周りは暗闇。光は、全くない。ただ、気を集中させれば、『俺』自身が見る光景が見れる。
「!? 雰囲気が変わった? 『跳躍者』! お前まさか!!」
その『救世主』の問いに答えた、体のほとんどを黒に侵食されたソレは、アイの声で、姿で、
けれど全くアイでは無かった。
「分かってるつってんだ!! いくぞ『救世主』!
お前は悪と共闘するぜ!!!!」
因みにアイの中の人(←オイ)は、『(nice boat.)』なので。
だから『(禁則事項です)』。




