第三話 修行風景~アイ・一視目~
さて、今俺は、
「あああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
……落ちている。
まっ逆さまに。
体勢は辛うじて平衡を保っているが、思いっきり息が吸えない!
つーか叫び声も辛くなってきました!
すると、
「なんだ『跳躍者』。
この程度で叫びおって。そんなに怖いか?」
何か隣をフワフワと馴れてる感じで、
中年親父の昼寝ポーズで落ちてくるんですけど。
というか声出せないんですが!?
何でそんな楽なんだ!
「まったく。声も出せないか。
たかが40000m程自由落下しているだけと言うのに」
!? よんまんめーとる!?
嘘だろ!? 現実離れすぎて実感わかねえ単位!
あおういうのヤメ!
「くくっ、その驚き顔面白……。
因みにあと300m程で河に落ちる。衝撃に備えろ」
…………
「て、てめヒュウッ! こ、殺すぎが!」
「当たり前だ」
テメエこの『悪魔の王』!
絶対死んでも呪い殺す!
…………アレ?
何か忘れてるような……。
もう眼前に河の流れが!
「ッ! 能力発動!
対象、俺! 効果、噴射!」
次の瞬間、超能力の最大出力で、1tもの空気が体を包む感触がする。
「……この感触。そうだ、俺には『能力』がある!」
「……それが『跳躍者』のみが持つ異界の力か。
よし、それを見せてくれれば良い」
……何だ? まさかこの度胸試し?で終わりじゃないよな?
それじゃコレを見てるどk……何でも無い。
「なら次は……」
既に俺は空気の塊に包まれ、河の水面上を浮遊している。
そして、気持ちを落ち着け、一応、外的魔力の強化魔法を体全体にかけておく。
「何をするん゛ッッ!!?」
あ……れ…………?
な…………んか、暗く…………
「ぐヴふッ!?
……っで、ディアボ……ろすッ! な、にを……」
水面上に倒れる感触。
ああ、以外と浅かったんだな。
胃や肺から溢れ出してくる生暖かい感じ。
……久しぶりに感じる、
「どうだ『跳躍者』?
久しぶりに感じる『死』の感覚は?」
『悪魔の王』の声がする。
そっか。これが……『死』。
俺程度の力などでは抗いようの無い、運命。
「……そうか……これが…………『死』か……」
何やってんだろうな。
さっさと修行終わらせて、妹を守って、
皆で『救世主』倒して、
早く、元の世界に戻って……それで、それで、
「…………紫……………………」
愛する人に、会いたい。
一番最初。この俺に、意味をくれて、居場所をくれて、
それで、何かをくれた人。
「会いたい」
どんどんと悪くなっていく視界の中、
俺は、最後にふと笑った『悪魔の王』を見た。
別に感動シーンを書くつもりなどこれっぽっちもない。
これだって、別に何もないもの、多分。
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