第二十九話 一時間前
小説で禁断っぽい回想シーン。
ま、この小説書き始めの瞬間からソレなんだから自重しないこの私。
……アイ達と『救世主』。戦闘一時間前。
ザッザッザ……
草原を歩く。草や地面を踏むたびに足音が出ている。
あちらから見つけられるのももう少しだろうか?
「なあアリア。俺達、勝てるかなあ……??」
「何だよアイ兄。さっきまであんなやる気だったのに、今更弱気発言かよ。
大丈夫。こっちにはアイ兄と私、それに義父さん。
それと……まあ、悪魔がいるから」
「確かに相手は多分一人。こっちは十一人。
圧倒的な戦力数差だけど……それが戦力差になるのか、ってな」
「それは安心しろ『跳躍者』。
それに我らには、秘策がある」
『悪魔の王』の言葉に頷く『七つの大罪』。
……策? 聞いてねーよ?
「……聞いてないんだけどさ、話した?」
「まだ話してなかったか。忘れてたな「ちょッ!!」
……内容はこうだ」
その後、簡潔に『悪魔の王』から説明があった。こういうのは自分なのか。
つまり、相手の『救世主』。以前にも言ったが勝ち目が見込めない不死の存在である。
その情報は確実で、そのせいで勝てるものも勝てなかった時さえあるそうな。
そんなモノ相手では、いくら『四人』の内三人+『七つの大罪』+人間最強がいたとしても、
勝てるはずなどないのだ。
力の差は無くとも、命に差はある、ということなのだから。
だが、この情報をあらかじめ、何十年も前から持っていた『悪魔の王』は、調べた。
この、『不死』を覆す方法は無いのか、と。
悪魔総出で探し求めたらしい。いずれ来る戦いに備えて。
人間の住む側の世界の最大の魔法図書館から、本専用の空間。
そしてこちら側の世界の魔術図書館、魔術所全てを読みきった……!
それで分かった。
実際、不死などという完璧なモノを崩す魔法・魔術など無かった。
何者にも崩されぬのだから完璧と言うのだから。
……だが、所詮それも、不死になった現時点での『完璧』。
『救世主』が『三人』と何度も戦っている間にも、時は過ぎた。
次々と生み出され、掻き消えていく魔法と魔術。
そして、見つけた。
…………これも魔法・魔術両方に膨大な知識を蓄えている『悪魔の王』だからこそ考えついたもの。
現存する最高位の対抗用魔術・魔法を、ほとんど組み合わせてつくったモノ。
それが、唯一の『救世主』の不死を打ち消すものであり、
それは俺たちに託された唯一の希望だ。
「だがさぁ、そんなモンって普通代価?みたいな物が付くんじゃないのか?
いかにも危険そうだし、いくら唯一の希望だからって……皆が死ぬのは俺だって嫌だ。
だけど、それを使わないで死ぬのももっと嫌だ」
「……安心しろ。お前より先にその事を聞いてきた『天使の末裔』にも同じことを返したが、
絶対にこれを使っても、誰も死なんさ。我が保証しよう」
「……なら良いけどさ。で、手筈は?」
「まず、私と義父さん、それと『七つの大罪』が先に前衛に出て、
囮みたいな役をする。それでやられたフリをしてるうちに、その魔術が使える『七つの大罪』全員が準備するから。
その瞬間私と義父さんは、『救世主』の隙をついて拘束。
それで術式発動―――って感じだけど?」
「俺は? まさか見てるだけか?」
「アイ兄は、私達全員を見て、何かあったら出れるようにして。
『悪魔の王』も、術式構築に時間かかるみたいだし」
アリアが喋り終わると同時に話すマスター。
「アイはまだまだ実践での戦いが私や王と比べて少ない。
だが、力はお前が上だ。だからそっちに回したんだ」
「そうだ。貴殿の言うとおりだ。
まあ、我はまだまだ『跳躍者』に負けたつもりなど毛頭な――――――ッッ!!!」
瞬間、『悪魔の王』が、その子供の姿で咄嗟に細い腕を、
自身の目の前で交差する。
そして、それが防御の姿勢だと理解できたのは、
ビョオオオワアアアアア!!!
「ぐッ!?」
「うわっ! 何これ!?」
「王!?」
「皆?」
この場所を突風が吹きぬけた時だった。
それは、どこぞの台風よりも吹き荒れ、そしてすさまじい風圧をかけてきた。
地面に足を食い込ませる。アリアは腕も地面につく程だ。
だが……
王がその場所には、居なかった。
「っ!? 『悪魔の王』!!!」
そして刹那の時、
ドガアアアアア!!!
遥か後方―――その時の俺にはそう感じられた―――で、爆音が響いた。
何かが地面に当たるような音を、そのまま大きくしたような感じだった。
そして後ろを向けば、
直ぐソコに、
『四人』のうち二人。
『王』と『救世主』が、拮抗していた。




