第二十四話 ……和解?じゃないよな
コイツは殺人欲じゃない。俺を殺せない。
それが分かっても、コイツの殺気は肌にチリチリと焼けるような感覚を与えるし、
戦い方もどうやら本気を出しているようだ。
戦闘狂じゃなかろうか? いや、きっとそうだろう。
アイツは殺人欲ではない。
でも、俺と戦う事に何の躊躇も無い。殺気も出せる。
ならば後は、コイツを屈服させ、俺が表層意識に出れば良いだけ。
………………
って、考えてた時もありますた。
「……いてぇ…………」
『痛い……。心が(笑)』
キャラ崩壊してませんか悪魔?
視界が真横になっている俺の隣に仰向けで倒れている悪魔。
「『四人』の力舐めんな。
それに、これは俺の勝ちだ。この体は俺のモノ。俺が司る」
互いの戦闘の結果を、俺の影が悪魔になった、『戦闘狂』の悪魔に言う。
『俺はお前を殺したいから。だから今は勘弁しといてやる。
今殺したらこれからの楽しみが無くなる。……もう少し遊んでから殺す』
「おうおう。そんなに殺気出しちまって。
というかいつからコレこんなにほのぼの空気になってる訳だ?
これじゃ読者が減る一方なのは『それ以上言ってやるな、俺』」
結果だけ言う。
俺は、勝った。
悪魔が使うのは、魔力任せの効果丸分かり魔術だけ。
何回も戦えば、そのパターンが染み付いていくのは必然だった。
それでも、魔法と超能力、体術のみで押さえつけるのは難しかった。
そして、本人に諭した。
「お前は殺人欲なんかじゃない。お前は戦闘狂。哀れで悲惨な俺の成れの果て」
思考内で出会えたのは当に天文学的数値だったのだろうか?
それとも……忌まわしき『四人』の力か? それは分からない。
だが、悪魔に勝った。自分の影に打ち勝った。……今はソレだけで良い。
「……俺は悪魔なのか?」
質問した。倒れている俺自身に。俺の複製に。
『…………そう、だ。
いくらお前の精神が人間のまま、悪魔の意識を地の果てに落としても、肉体は悪魔だ。
もう既に変換された人では無い化け物。
しかし面白いな!! くくくッ! いくら素体でもこれなら反応すると思ったのにな。
当に我が主に相応しい!!』
「……主?」
聞きなれない言葉に耳を貸す。
主とは何か? ……大体予想はつくが。……また面倒な設定が増えるようだ。
『そうだ。お前は肉体が悪魔でも精神は人間。お前単独では『魔術』は使えない。
だが、俺は悪魔。お前の影。影と本体だから愛称は良くも悪くも抜群だ。
そこで、『魔術』を使う時には、俺が表層に出て代わりに使ってやろうと思っただけだ』
「…………そのまま乗っ取るつもりか?」
『そんなことは無い。結局は精神が強硬な方が勝つからな。
今更、お前を殺しはしない限り、俺が表層意識に出る事はない』
「お前はソレで良いのか? 暇じゃないのか?
いくら殺人欲じゃなくとも、戦闘狂なんだし戦いたいだろう?」
ずっと襲われて、本当に殺されかけた俺が言うのもなんだが。
だが、これでも俺の一部だ。
『それなら大丈夫だ。お前がちょくちょく思考内に来れば、更に実力が増した俺がフルボッコにしてやる』
「それ決定事項!? ……ま、良いけどさ」
何か物語全体通して、戦闘友達がふえてる気がする。
……殺友?
普通こういうのって仲間じゃねーのか? 何だ殺し合い仲間って?
『ところで……』
「ん?」
『また殺し合いをしようか!! 今度こそ殺してやる!!!!』
…………
もう何か、アイと『悪魔の王』の関係と同じだと思ってください。
今回の新造語
・殺友
お互いが直前まで殺し合いをしていたにも関わらず、
なぜかその後仲良くなる関係をさす。
つまりは、お互いを殺したいほど仲が良いってこと。(慣用句?)