第十九話 アイの目覚め~『禁忌』と『神気』~
「……アイ兄……!! ……アイ兄!!!!」
「うおッ!!??」
その声で起きる。
この世界で会い、そして何度も聞いた妹の声。
「あ……」
「何だ? 何か用か?」
「あ、アイ兄の、バカヤロォーーーーー!!!!」
「そげぶッ?!?!?」
瞬間、刹那のタイミングで懐に突進してきたアリア。
……今のは効いた。
「ずっと、しんぱ……して…………た……」
「……泣いてるのか?」
妹の体はビクッとして、そして顔をあげる。
……やっぱ妹だな。
「うるさいッッ!!!!」
顔全体を真っ赤にした後、
「ほぐふぅッッ!!?」
殴られた。腹を。めっちゃ痛い。
しばらく悶えていると、妹が離れるのを感じた。
改めて感じる自分の体の感覚。
首とか関節が痛い。ずっと眠ってたみたいに。
……やっぱりそうか。
周りを見れば、自分が此処にどれ程の被害を与えたが分かる。
俺は、冷たい石の床……では無く、
ベッドその床に一つポツンと置かれた簡素な木のベッドに寝ていた。
起きて床に立ち上がる際、腰が痛かったのは気にしないでおく。
服は、元の世界の病院着のコチラ版みたいなもので、簡素だった。
「……そこに居るんだろ『悪魔の王』?」
「…………その様子だと無事のようだな。よく舞い戻ったな我が好敵手」
石の床を歩いてこちらに来る『悪魔の王』。
その足音は壁に響き、そして跳ね返る。
「アイ兄……」
心配そうにこちらを見るアリア。
まったく、妹にこんな顔させるなんて何やってんだか。
いや、俺が変わっただけか? ……ま、良いか。
「大丈夫だよ。それに、もう自重しろ王」
「王は努力するものでは無い。今すぐ止めるさこんな事は。
……それより、今が何日目か分かるか?」
そう。ソレが重要。
俺は、『悪魔の王』を恨んでる訳じゃない。
元々、敵を殺すための修行だ。
それに……
「もう、結構俺は寝てたのか……??
アリア、お前の魔力、もう俺に届きそうだ」
「え!? べ、別にそこまで強くないッ!!?
アイ兄の方が強いだろ!」
まったく、この世界はどれだけ規格外を量産したいんだよ。
これも……『意思』か。
「その様子だと、大体分かっているようだな。
……今日は、『753日目』だ。『跳躍者』」
「そうか。もうそんなに……」
まずいな。これは予想外だ……。
そこまで時間が経つのが早かったか。こっちの世界は。
「……心配かけたな、アリア。修行、頑張ってるんだな」
「…………バカヤロッ!!」
何だ? また顔真っ赤にして後ろ向いちまった。
??よく分からん。
すると、また鉄格子の扉が開く。
「よう。ひさしぶりだな」
「! マスター!! 久しぶりです!」
一瞬誰? と思ったが……そうだった。マスターだった。
「マスターがアリアの修行つけてくれたんですか。ありがとうございます」
「いやいや、私は何もしていない。全てアリアの望みだ。
……それに、私ももう出番など無い。これからはお前達の時代だな」
「は? 何と?」
「いや、なんでも無い」
なんだったんだ今の? ……まあ良いか。
「話は終わったか?」
「ああ」
「そうか。……少し気になるのだが、良いか?」
「何だ?」
「『跳躍者』、お前。何してきた?」
「………………はぁ……やっぱバレるか」
しょうがない。話すか。
……全てを。
サブタイの『禁忌』と『神気』については次話で。
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