第十四話 修行風景 ~アリア対『色欲』なのに~
あ~、何か気持ち良い。
アイ兄、私、何か変な気持ちだよ。
「………………はっ!!?」
最初に視界に映ったのは、『色欲』。
『色欲』は、どうやら寝ている私から見て、
すぐ唇がつく直前の状態で、横にいる。
「やっと起きられましたか、『天使の末裔』様」
「ってええ! 何しやがんだよ!」
寝ていた状態から、少し起き上がって後ろに離れる。
すると『色欲』は至極真面目な顔をして、
「何とは、もう訓練をつける時間というのに、
一向に貴女様が起きないので、起こそうと思いまして」
「え? 時間?」
……今思いかえして見れば、私が寝ているのは、草原だった。
勿論、ちゃんと服も着ている。
…………服?
「服、着せたのって……」
「はい、私です。
色々とその点ではお世話になりました」
今思えば、温泉に入る前と比べて、肌がツルツルテカテカピカピカしてるような気が……。
あ、ああ! 温泉の効能に違いない! そうに違いない!
そう思ってなきゃ、やってられない!
「あ、そうだ! 訓練の時間だっけ!?
私は全然大丈夫だからやろうぜ!」
「本当に大丈夫なのですか?」
「ああ! ……やるかやらないかは別としても、
まずはどいてくれないか?」
「あ、そうですね」
私の上から退散する『色欲』。
「うッうう~~ん……」
立ち上がり、背伸びをすると欠伸がでた。
うん。疲れもないし、すぐにでもやれるな。
「よしっ!
……『ストーミング・ダブル・ブレイド』
外的魔力強化『全身』
『ストーム・ダンス』」
魔力によりできた、水が圧縮されている、一本が脇差程度の双剣を両手に持つ。
そして、外的魔力が全身に染み渡り、更に重複して風が体に纏われ、軽くなっていく。
「もう始めて、良いんだよな?」
すると目の前、少し離れている『色欲』は笑い、良いですよと言う。
「(初期詠唱破棄!)大いなる力、ここに現れん!
……まずは先攻! 『フリーズ・ブレイク』ッ!」
瞬間、周りの空気が寒くなっていき……
そして、『色欲』の頭上に、氷の塊を作っている。
「なるほど。中々大きいですね。魔力の多さに問題はありませんね」
「余裕だなッ!」
私の上げた手を、下に下げると同時に、直径30m以上ある粗い氷の球は、
『色欲』の立っている場所に落ちた。
ズズズズウウゥゥゥ……
と、氷の球は地面にめり込む。
しかし、
「手応えは……あるはずない、かッ!」
キィン!
と、甲高い金属音を後ろに聴きながら、
前に跳び、後ろを振り向きながら背中に動かした左手と双剣を戻す。
そこには、既に鉤爪を装着し、臨戦態勢に入っている『色欲』がいた。
「今のを防ぐとは、学習したようですね」
「そりゃ何回も沈められてたらなっ!」
魔力と風で強化してある脚力で、一気に相手の懐に飛び込み、
「ハァっ!!」
双剣を次々と繰り出す、が、
全てそれを鉤爪で確実に防御していく『色欲』。
「チッ……(初期詠唱破棄)『ウォーター・チェーン』!!」
水で作られた、何メートルもある鎖が、『色欲』の体に巻きつく。
「こんなものが」
『色欲』は、それを破壊しようと力を込める。
しかし、
「別にッ、動きを鈍くさせれば!」
私はその隙をついて、相手の懐に再度飛び込み、
双剣で乱舞を繰り出す。
「ウオおおおっッ!!!!」
そしてその双剣が相手に当たろうかというとき、
ズズズズズゥゥゥゥ!!!!!!
大きな地震が、私達を襲った。
「うおっ!!?」
体勢を崩した。
しかし、倒れる直前に、既に鎖を壊した『色欲』に支えられた。
「何だってんだ!?」
『色欲』に話しかけるが、何も答えない。
何か事情でもあんのか?
しかし、帰ってくるのは無言だけだった。
何か近頃アリアのイイとこないっすね。