第十二話 悪魔変換~アイ対『憤怒』~
「いってええええ!!!」
「はいは~い。我慢してね~。(棒読み)」
「つか『怠惰』! お前のせいだろ!?」
俺は、腕や足に開いた浅い傷を手当てしながら、
目の前の床で寝転んでる『怠惰』に叫ぶ。
「いや~、まあ、傷浅かったからいいじゃん?」
「……ま、まあ、それだけが不幸中の幸い?ってやつだよ」
喋りながらもまた一つ、腕に付いた傷が塞がる。
まあ、能力『祖体制御』の応用だ。
腕をくっつけた時よりも全然難しくないからな。
「それにしても、その『跳躍者』だけが持つ
能力って、便利だよな~」
「応用は利くからな。それに、軽くなら治療にも使える。
だけど、次は『憤怒』だよな?」
「その通りだよ」
『憤怒』が、俺の質問に答えながら、俺の前に立つ。
その赤すぎる髪がたなびく。
「あ、よろしく」
傷の治療があらかた終わったので立ち上がる。
「……まあいい。私は手加減しないからな、全力で来い」
……やっぱり休みは今のだけなのね。
いつのまにか『怠惰』も離れている『傲慢』の傍で寝てるし。
けど、二人ともやはり手加減してたのか。
「…………魔術は?」
「別に使ってもいいが……変換が早まっても知らないからな?」
「そりゃ勘弁」
俺は『憤怒』の言葉に対して苦笑しながら、体術の構えをとる。
魔術とは、魔法と同じようで違うもの。
この世界では、人間が外的・内的魔力をつかって発動するのが『魔法』。
悪魔達が使う特殊な魔法を、一般的に『魔術』と言う。
ただし、人間が魔術を使う場合もあれば、悪魔が魔法を使う場合もある。
後者はともかく、前者は魂が砕け散り、消滅するらしいが……。(テンプレって何?)
因みに、俺が先ほど『怠惰』との戦いで使った、『アスタロトの視権』という『魔術』は、
かの有名?な高位の悪魔『アスタロト』が持つ、未来を読む力を一時的に使うものだ。
そう、例えるなら、『私のギ○スは、未来を(ry』だ。
「考え事は終わったか?」
「ああ、じゃあ、行くぞ!」
外的魔力を纏い、風を纏い、
「光の精霊、我に答えよ。『ライト・ハンダー』」
両腕に光が纏われる。
……手首までが黒い機械の右手、完全に黒くなっている左手。
そこに纏われる光。変だな。
「その程度で良いのかお前は?」
「? まあいい。行くぞッ!」
その瞬間自身の視界は景色を捉えず、
目の前には、『憤怒』の後頭部。
もらった!!
とはならなかった。
「!!!」
「おそいぞ?」
俺の光が纏われた左手の拳は、『憤怒』の指一本……
いや、更に言えば、小指の先のみで、防いでいた。
『憤怒』はこちらを見ながら、表情を怒りのそれにして、言う。
「……それに力も、弱い。
…………やはりお前には、失望する」
『ライト・ハンダー』(LIGHT・HANDER)
両腕全体に光を纏い、
硬度・対魔法力その他諸々がアップする。
身体強化系魔法の一部である。
しかし、光属性もあってか、その他の属性よりも効果は高い。