第十話 悪魔変換~アイ対『怠惰』~
「ふうあっ!!? おおッ!!! うわあ!!?」
正面、左右から来る打撃をかわしつつ、後退して立て直す。
「なさけないよ~。……ほら」
すると一瞬で相手の姿が掻き消え……
「そこだッ!」
ザしゅっ!!
と、鈍い音を出して、俺の拳が『怠惰』の肩にかする。
そしてお互いに距離をとる。
「いや~、今のは危ないよね。
そっちの手はだめだってば~」
まあ、俺の右手なのだが。
あ? 機械じゃないのかって……。
言ってなかったっけ? ああ、駄目作者が前々回に話すの忘れてたからか。
作者曰く、『間違えた訳じゃないんだからねっ!』だそうだ。
俺の右手って、神経つながってるから、自由に動かせるんだが、
手の奥深くまでくるような衝撃をくらったら、こっちも痛みを感じるってわけ。
因みに、右手の指から悪魔変換?というヤツが始まったのだが、
その黒い何かは俺の右手全部を覆うと、腕のほうには行かなかった。
だが、今は左腕全体と、右足の膝までは、その何か黒いものに侵食されてる。
「だからさ、これ機械だから止まったんだろ?
って、つーかあの痛みどうにか為らないのか?」
「いや、アレ無理らし~よ?」
悪魔変換してる最中って、凄い痛みが猛烈に襲うんだよ。
それも、立ってられないほど。
だが、そんな俺の嘆きも、『怠惰』相手では意味ねーな……。
「外的強化! 『全身』!」
強化魔法を全身くまなくかけて、相手に突っ込む。
そして、
「世界の根源よ、我に識る力を。『アスタロトの視権』」
「はぁ? 何それ怖い。ま~、自身の変換と魔属性を利用しちゃって。
……そろそろ精神も悪魔になってきたのかな?
そんな人間にとってはふざけてる魔法を使うなんて……。
……………………………長台詞面倒」
「読んだ」
俺は、『怠惰』の移動中の横っ腹に、回し蹴りを見舞った。
「ぐぶッ!!??? って~な~。
女には優しくしろ、よっ」
刹那、俺の左肩にむかって、相手から拳が振るわれる。
そして、その軌道を、自分が認識するよりも早く、読んだ。
はずだった。
「ぐうッ!!!!!!!?」
直後、左肩に衝撃、そしてそこを中心に、俺は
若干左回りしながら壁に叩きつけられた。
「(何だ? 今、確実にアイツの軌道を読んだはず!?)何をした?」
「分からないかな~分からないよね~。
『傲慢』は速度、そして『怠惰』は惰眠、『憤怒』は力。
これで分かったら君は凄い~。
ヒントは、私達は人間じゃなくて悪魔なんだよね~」
「?? 人間には無い技能?
でもな……ま、良い! 今は反撃!」
と、立ち上がったその瞬間…………
視界がブレなくなった。
「ッッッ!!?? ん~~~~~~~~~~~~~」
!!?? んだよこれ!? 声が出ねえ!
……いや、これは違う! 声は出てるけど、それを感じる神経が遅くなってる?
しかも、視界がブレなくなった。
普通、人間ってのは視界はブレるものだ。
それこそ、世界中探して、動いても視界がブレない奴がいたら凄いよ。
だが、今俺はその状態になっている。
と、
「ッ!?」
目の前から、ゆっくり、ゆっくりと、『怠惰』は歩いてくる。
だが、その動きは、見るからに鈍重で、テープの逆再生でもこれはできないだろう。
だが、それでも声がでるより早くこちらに着く。
そして、『怠惰』は、とてもゆっくりとした動きで、
やはり、俺の体全体に、何処から作ったのか、真っ黒な釘を、刺していた。
決して、後付じゃない!