第八話 悪魔変換~アイ・二死目~
ひゅう!!!
と、隙間風が吹くような音を立てて、
なぜか突風が吹いてくる予兆を感じる。
これも能力の応用なのだが……
「うオッ!!??」
また咄嗟にジャンプする。
するとその突風は、俺の予想通りに、浮いた両足と床の間をすり抜け、
後ろの石でできた壁に当たり、壁を砕く。
「避けてるだけか?」
また、声が聞こえる。
それも、風が当たった壁の方から。
「グうっっ!!?」
後ろから、普通のパンチが飛び、背中に当たった。
一瞬で肺の空気が外に流れ出し、呼吸が瞬間的に止まる。
「ゲホッガハっ!!!」
「……さっさと起きろ『跳躍者』。
俺様は早く帰りたいんだ」
『傲慢』の声が、いつ来たのか、すぐ横で聞こえる。
俺は、蹲っていた場所から立ち、声の方を向く。
「能力発動! 対象、空気!
能力、『操作』!」
自身の超能力、『祖体制御』を使い、
周りの空気を操作、それらを圧縮、弾の形を一瞬で形成させ、放った!
「だから……何度言わせるか。 俺様相手なのに失礼だぞ?」
また、まただ。
ヒュウうアッ!!
と、今度は、とても甲高い風の音が聞こえ、
突風が俺をすぎる。
今度は避けられなかった。が、
「あれ? 何も……ない?」
床や壁を割るはずの一撃は、だが、なぜか俺を無傷でいさせた。
いや、元々正体も分からない攻撃。
傷が無くとも不思議ではないのだが。
すると、後ろから声が聞こえる。
「あ~あ。やっちゃったよアロ姉……。
っていうか寝ていい?」
「だめだろ。それにしても、まだ気付かないかアイツは!」
多分、『怠惰』と『憤怒』だ。
だがしかし、二人の言う意味が分からない。
後ろから、声がまた聞こえる。
しかし、それは二人とは違う声で、しかも俺の首元から響いた。
「それ程まで危機感すらないとはな。
正直言って失望した。
もし俺様の御眼鏡に適ったなら、
配下の下っ端にしても良いかと思っていたのだが、な」
「!!!」
直ぐ後ろを振り返る。
が、声の主、多分『傲慢』だが、
俺の視界には『怠惰』と『憤怒』の二人が
少し離れている場所に立っている以外、影すら見つからなかった。
「……何処だ!?」
「まったく、本当に気付かないかお前は」
また後ろで聞こえる。
しかし、また居なくなる。
「……能力発動、対象、空気。
発動、『操作』」
この部屋に充満する空気全てを操り、不規則に流す。
その空気の流れを読み、何処にどのような物があるのかを調べていく。
はずだったのだが、
「ガ゛っ゛!!!????」
能力は終了された。
いや、強制中断させられた。
これは……痛い。
「……いつのまに。
って、さっきの二人の言葉、そういう意味かよ」
先ほどの『怠惰』と『憤怒』の言葉。
俺は、俺が『傲慢』を見つけられない事へのものだと思ったが、違かった。
口の中に鉄の味が広がる。
そう、いつの間にか、俺は、体の前面と、後ろ首に、
斬撃をくらってたんだ。
っていうか斬撃って、そのままカマイタチみたいなモンか?
まあ、傷が浅いからどうにかなるが……。
しかし、体の力が抜ける。
いつの間にか、また俺の視界の中に、『傲慢』がいた。
「……はじまり、か」
何だ? はじまり?
というか、俺はなんでコイツと戦って……。
「ぐッゥ!? あ、アアア!!?
グ、ガああアア!!!!!???????」
はじまりは、右腕。
右手の指が、熱い!
それも、焼いた鉄板を押し付けるよう……なんてレベルじゃない!
勿論やったことは無いが、溶岩に指だけ突っ込んだような感じだ。
「アアアアアあああアアア!!!!!!」
喉が枯れそうだ。指がちぎれそうだ。
だが、痛みは続く。
そうか、『はじまり』。
すっかり忘れていた大事なこと。そう、悪魔になる、素敵な第一歩だ……。
まあ、アイ君の悪魔への第一歩です!