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ふられた妄想厨少年、ブラック沼にハマるも幸せそうです  作者: モモル24号


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第6話 腐れ縁のトラウマ


 僕の能力検証を兼ねたお月さまの掃除‥‥それによりぶり返した風邪がようやく治った。風邪を拗らせた原因は僕だけではないが、愛ゆえの結果なので喜ぶべきだろう。


 学校へ行くと、昼休みの時間に新聞部の悪友がニヤニヤしながら僕の席へとやって来て、肩にポンと手を置いた。


「もっくん⋯⋯お疲れ〜〜」


 コイツ、何を知ってる⋯⋯って、心当たりはアレしかない。部活を辞めて帰宅部になったので、勘づいたようだ。


 新聞部の 堀根 千花(ほりねちか)は中学生時代の同級生で、いわゆる腐れ縁の幼馴染だ。もっくん呼びからもわかるように僕にだけ、やたらと距離感が近く、人懐っこいので誤解された黒歴史がある。


 黒く艶のあるショートボブヘアの透明感ある白い肌。制服にスカートを履いてはいるが、中身は男だ⋯⋯たぶん。中学から高校に入っても、同じクラスになった。


「もっくん、見事に振られたよね。撃沈だよね。ウケるよね」


「⋯⋯何で知ってるんだよ」


 幾島さんが言いふらすわけないので、覗いていたに決まってる。どうして告白するタイミングがわかったんだ。


「見てたからに決まってるじゃん。ちょうど取材でさ、体育館にいたんだよ」


 絶対嘘だ。千花は妹の小望とは別の意味で僕をからかうのを楽しむ面倒なやつだから僕の様子から察したに違いない。


「本当だって。ほら、告白が成功したらあげようと思って」


 千花は脇に挟んでいた大きめの封筒から一枚の写真を出した。写真には幾島さんがジャンプして、強烈なスパイクを放つ瞬間が綺麗に撮られていた。


「学校の掲示板用の記事で、新入部員特集があるんだよ。いわゆる宣材写真だね」


 何人か新入生の候補が何人かいて、幾島さんは取材を許可してくれた一人らしい。掲載用のは顔がメインで当たり障りのない写真を使うそうだ。この写真は、千花の趣味。


「くれっ!!」


「駄目だよ。変な事に使うでしょ」


「使わないと約束する!」


「いや、振られた相手の写真欲しいとか普通にキモいからやめなって」


 予想外に僕が食いついたので、流石の千花も引いたようだ。千花は中学時代は写真部だっただけに、撮り方が上手い。幾島さんが躍動する、しなやかな流線形の曲線美をしっかり捉えていた。


「あげてもいいけど、条件がある」


「なんだよ。くれるなら何でもするぞ」


「ふーん‥‥ならさ、これを持って幾島さんに説明して許可をもらっておいで」


「ぐっ⋯⋯そ、それは正論だけど無理だろ」


 振られた上に、結月呼びはやめてね? そう告られた僕が、彼女の写真を持って話かけてどんな反応するか⋯⋯学校生活が終わる未来しか見えない。


「あはは、もっくんのガックリする顔がまた映えるねぇ。いいのいただいたからこれは進呈するよ。幾島さんには内緒だよ?」


 千花は悪い顔をして、ニヤつきながら写真を封筒に戻して僕に手渡す。


「雲をいじる能力だっけ? 小望ちゃんからも聞いたけど、今度ボクにも見せてね」


 バシッと強く背中を叩かれ、千花は自分の席に戻って行った。告白の時に、僕の能力を見ていたのだろうし、このお宝と引き換えなら悪くない。僕は写真が傷まないように教科書で挟むと大事に鞄にしまった。


 帰宅部になると夕食までは暇だ。僕は千花から貰った写真を飾るために帰りに厚手のクリアケースを買う。これは幾島さんのファンとして、飾るだけ。未練なんかじゃないぞ⋯⋯。僕はスキップしながら浮き足立って帰宅した。


「ご機嫌なお兄ちゃんって、普通に気持ち悪いよね」


 帰って早々、玄関で口の悪い妹から口撃を受けた。だが、今日の僕には幾島さんが付いている。その発想がキモいと言われようが、小望だって見れば、素敵⋯⋯と呟くはずだ。


 僕は念入りに手を洗い、自分の部屋へ向かう。何故か小望がついて来る。いいだろう、小学生女子に女神とはどういうものか教えてやろうではないか。


 僕は買って来たケースを机に置き、鞄から封筒をそっと取り出す。僕の部屋に女神降臨──────


「⋯⋯なんじゃ、こりゃあ?!」


 髪型は幾島さんと同じ黒髪ショートボブ。でも写真に映っていたのは、堀根 千花のセーラー服姿⋯⋯だ。


「お兄ちゃん⋯⋯やっぱり千花さんの事好きなんだねぇ」


「ち、違うって。これは罠だ。嵌められたんだ。千花に幾島さんの写真を貰ったはずが、すり替えられたんだよ!」


「幾島さんって、お兄ちゃんが振られた人だよね。それはそれでキモいから」


「Oh ノーーー!!」


 小望が悲嘆する僕の様子を撮影している。完全に千花の企みだ。封筒はきっと二つあり、素直に幾島さんの写真を渡すふりをして、黒歴史のトラウマ写真を入れたものを渡したのだ。


「お兄ちゃん、世の中そんなに甘くないんだよ」


 ガックリと膝をつく僕に、容赦ない追撃をする共犯の小学生。まあいい。これはこれで可愛いので、ぼくは千花の中学時代の写真を買って来たケースに入れ、引き出しにしまった。


「お兄ちゃん⋯⋯」


「わかってる。何も言うな、妹よ」


 物心ついてたかが数年の小生意気な小学生には、思春期真っ盛りの男子の心理などわかるまい。いや、きっとわかっているので言ってほしくないのだ。

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