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ふられた妄想厨少年、ブラック沼にハマるも幸せそうです  作者: モモル24号


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第12話 雑草魂


 もうすぐ夏休み。浮かれる帰宅部の僕のの前に立ちはだかる、期末テストの壁は高い。高校に進学して、はじめは部活動に勤しんだ。幾島さんに告白し振られた後は、目覚めた力の訓練などで忙しく⋯⋯つまり、勉強ろくにしていない。


「吾が教えてやっても良いぞ」


「異星の人なのに、現代の学問わかるの?」


「高度な学問や異国の言葉は苦手だが、だいたい他はわかる」


 明星さんはそういうと、僕の教科書をいくつかパラパラめくり、頷いた。脳筋武闘派な色気担当要員だと思っていたけれど、家庭教師として、本当に有能だった。


 日常の事は母さんや小望が教えているので、日本の一般家庭の生活を難なく暮らせている。適応能力が高いとは聞いていたけれど、いまはありがたい。


「⋯⋯⋯⋯待て、翔。連絡が入った。情報局から、船団が近づいている報告を受けたが⋯⋯」


 こちらに向かって飛んで来ているらしき流線形の細長い物体が複数。戦闘型偵察機数機だった。明星さんは、輝夜様達月の防衛局と、地上で暮らす同胞それぞれから船団の情報を得て場所を確定していた。


 僕は訓練を重ねたおかげで空気中の水分‥‥湿気を使い、見上げる空一面に薄い防膜を張るくらい出来るようになった。能力を鍛えたおかげというよりも、輝夜様から貰った月の石が僕の能力を拡張してくれるおかげだ。


 この力で巨大な日傘をイメージすれば酷暑和らぎそうだよね。でも日照不足で農家の人が困るから、光は通さないと駄目か。


 練習時にそんな雑念を抱き、僕の妄想が中途半端に混ざったせいで、空に巨大なきのこ雲が出来た日もあった。当然ながら一時、SNSがバズった。入道雲がたまたま形を変えたと専門家が述べてくれたので助かったっけ。


「空中で撃墜に向かう。足場を作っておけ、翔ぶぞ」


 テスト前に来るとか、迷惑だよね。もう少し空気を読んで来てほしい。僕は庭に用意したお子様用ビニールプールに月の石を浸して水を張り足場を作る。浸透させるほど効果は高まるけど、足場ならこれで充分だ。


 明星さんが僕に次いで飛び乗り、自分と僕の姿を消して飛び上がる。急激な気圧の変化に目眩がする。一瞬で上空数千mまで飛ぶとか、なかなか明星さんもチートだよね。


 僕は足場に呼吸の確保のための雲を模した霧状の薄い膜を張る。明星さんは高度でも平気なようだ。


「そなた、初任務がコスモスギャング団とはついていないな」


「なんですか、そのギャグみたいな集団」


「コスモスギャング団は、宇宙海雲を荒らし回る最悪の星賊だ」


 急にSFな話になった。いや、空を守る時点でそりゃなくはないか。巨大隕石とか実際に近づいて来ていても、僕らは何も知らされずに過ごしていた。そういう噂話は取り上げられていても、本当にヤバいやつが来ていた場合、発表しないよね。


「運よくコースが変わる、壊滅するようなものが到達しない理由、わかっただろう」


 大抵の文明はまだ星に生命の息吹を宿して間もない地も多く、コスモスギャング団に狙われると対抗出来る技術力が育っていないそうだ。


 かつて地球にも何度となく襲来して、高度に育った文明さえ何度となく滅ぼされたと言われていた。彼らは自分達の優位性を保つために破壊を繰り返すと言われており、不毛の地に変えた星が再び活力を取り戻していないか確認にやって来る。資源を欲しがる説は、空間を自在に動き回る文明への理解が足りないと言わざるを得ない。


「まるで僕らは雑草扱いだね」


「やつらはそういう感覚だろう」


「根こそぎ枯らしたのに、生命が宿るのはなんでなんだろう」


「破壊を繰り返すものもいれば、再生を行うものもいる。やっている事は世界が変わろうと同じだ」


 破壊し、戦うゲームが好きな人、育てたり作ったりするのゲームが好きな人もいる。そういったもの同士がせめぎ合いをしているのかもしれない。


「そなたが以前言っておったな、世界の命運をかけられても困ると。吾らとしても考えは似たようなものだ。守るものがあるから守る⋯⋯それだけのことぞ」


 初めて明星さんが格好良く見えたよ‥‥足場を作っている間に僕の部屋で着替えていたのでバニー衣装だけど。

 

 つい最近も先遣部隊が派兵されたが、彼らの出現予測ポイントを金星人達が先に制し、退けたという。


「なんで日本ばかり狙うんですかね」


「それは幾度も刃を交えて来たからだろう。それに気付かれたのかもしれんな。まあよいさ、いずれわかる」


 どうやら遠い過去にもコスモスギャング団との戦闘があったようだ。明星さんは何か知っているようだけど、話す気はあまりないようなので、僕もそれ以上踏み込まない。


「───って、それどころじゃないし」


 高高度からまっすぐに六機もの戦闘機が向かって来る。透明化しているのに僕らがいるのがわかるみたいだ。


「透明化はあくまで地上の者達への対処だ。奴らは高感度センサーを備えている。上空の違和感に気づいたのだろう」


 僕らを狙って光が放たれる。まるでまっすぐ落ちる雷のようだ。明星さんは錫杖を掲げ無理矢理光の砲撃を横方向へと逸らす。地表への直撃は避けられた。


「足場が揺らいでおるではないか。あんな挨拶がわりの攻撃で、動揺するでないぞ」


 明星さんから叱咤の声が飛ぶ。高音の空気抵抗音で耳が痛いし、戦闘機がすり抜ける風圧で吹き飛ばされそうになる。


「ぶつかって来ないんですね」


「吾を警戒しているのだろう」


 光速で発射される攻撃を逸らすくらいなので、まともにぶつかれば武が悪いと考えたらしい。とんでもない科学力を前に、戦国の武将のような武器で戦うとか⋯⋯明星さん、ヤバい。


「翔よ、次の接近でバルーンを頼むぞ」


「はいっ!」


 大きなシャボン玉のようなものを大量に放つ用意をする。敵機の進行を予測して、瞬間的に転移するつもりなのだ。シャボンの中身はベタベタな糊餅。小望と初めて空に向かった時のフワモコを改良したもの。


 シャボン玉にぶつかって多少嫌がらせになればいいな。

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